氣石売りの旅少女と勇者
……ーーーーこれはひょんな事から勇者と一緒に魔王討伐へ向かう事になった少女と、その原因の勇者のお話ーーーー……
薄暗い洞窟の中、発行する鉱石や断末魔や怒号が響き渡り蝙蝠のような生き物がその声に驚き飛んで行く。そこは少し広めの広間のような場所で、白銀の髪を短く肩辺りで切り揃えた少女が石で出来たような剣(以下石剣)でゴブリン複数体相手に大立ち回りを繰り広げていた。
少女はその石剣で慣れたようにゴブリンの喉を斬り裂いていく。それは1匹にとどまらず2匹、3匹4匹と。まるで踊っているかのように淀みない動きでゴブリンを片付けていく。
最後のゴブリンの胸を後ろから突き刺し。絶命を確認するとゴブリンの背中を蹴り石剣を引き抜くと石剣の刃にこびり付いた血を2、3度左右に振って払った。少女が石剣な刃毀れが無いか確認していると、目の前の通路から黒髪短髪つり目の男性現れた。少女とは違う鉄剣を右手に握りながら、少女に声をかける。
「リフィちゃん、終わったか?」
「あ、ブレン。うん、今終わったところだよ。」
リフィと呼ばれた少女は石剣の刃毀れが無い事を確認し終えると、腰に下げている鞘に石剣を収め。そして新たに鞄から短剣を取り出し周囲のゴブリンから討伐証明である4本の犬歯を剥ぎ取り始める。ブレンと呼ばれた男性も、少女の周囲に倒れているゴブリンの犬歯を剥ぎ取り始めた。
「相変わらずその石剣の斬れ味はオカシイな、何で石なのにこうもすっぱりと……」
「それは私が生成した氣石で出来ている氣石剣からだと説明したじゃないか」
ゴブリンの首にある一本の綺麗な斬れ跡を見てブレンは諦めの感情も含んだ声色でボヤいた。
それを聞いた少女は剥ぎ取り作業をしながら、自身の腰に下がっている氣石剣と呼ばれた剣を指して言った。
「んん、まあそれはわかっているが……何となく納得できなくてな。なぁリフィちゃん、俺もその氣石剣作って欲しいって言ったら作ってくれるのか?」
「別にいいけれどお金とるけどいいかい?」
ブレンの問いに少し口元をニヤけさせてリフィが問いを返すと、ブレンがわざとらしく苦笑する。
「……勇者特権でどうにかならないか?」
「ならないね。私としては勇者だっていうなら懐の暖かさを見せほしいかな」
クスクスと笑いながらリフィは剥ぎ取りを進ませる。のを見てブレンが肩をすくませる。
「手厳しいな、まあ冗談だ。オーダーメイドだと幾らだ?」
「オーダーメイドでブレンの氣石剣を作るとなると……片手剣かい?」
「そうだな」
片手剣と聞き、リフィが剥ぎ取りの手を休ませ、
思案気な顔をする。ブレンは横目にその顔を見つつ剥ぎ取りを続ける。数が数なだけ時間がかかる。
「……ふむ、よし、シンプルな片手の氣石剣なら500シェムくらいで作ったげれるけど、どうする?」
「500シェムか……それくらいなら新調すると考えたら妥当か。よし、頼む」
考えがまとまったようで、リフィがブレンに値段を伝えると、ブレンは少し考える素振りを見せるが、すぐに了承した。
「うん、わかった。宿屋についたらまた詳しく話そうねっと……よし、剥ぎ取り終わった」
それを聞きリフィは笑みを浮かべ、止まっていた手を進めて最後のゴブリンの剥ぎ取りが済んだ旨を伝えた。
「お疲れ」
「うん。はい、これ」
「おう、ありがとな」
ブレンに剥ぎ取った犬歯が入った袋を渡すと、ブレンは自分の分とまとめて紐で縛り、腰のポーチに仕舞う。
「よし、じゃあ帰るか。帰ったら片手剣、頼むぞ」
「任せてよ。あ、料金前払いね」
リフィの手のひらを上にし、親指と人差し指で丸を作る仕草をするのを見てブレンは今度は自然な苦笑を浮かべた。
「おう、わかった宿屋に着いたら渡す」
「おっけ。じゃあ転移するからこっちに来て」
ブレンの言葉を聞いたリフィは頷き、転移するから近づけと手招きをする。
「ああ」
「転移するよー『スキル:転移 行き先 子猫のベッド』」
ブレンが自分の近くまで来るのを待ち、スキルを唱える。
一瞬光ったと思えば2人は姿を消し、後には静寂のみが洞窟に残った。