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プリズム

2011年の拙作。再掲載。

 翌日の雨に打たれながらぼんやりと待ちぼうけていると向こうから走ってくる車のライトが嫌らしく視界を染めて、目を細める。そうやってぐっと狭めた視界に昨日を思い出しては空を見上げ、攻め立てる雨にやられるまま。

 タクシーを止めようかどうしようかと悩みながら信号を待っているとスッと薄暗がりに入った。誰かが背後にいる気配と、影を作る傘に振り返ると、ユナが居た。昔少しの間だけ付き合った女だ。

「何してんのこんなところで」

 あらゆることが、それはもちろん昔の女であろうと例外ではなくどうでもよくなっていた俺は、立ってる、と答えた。あからさまに不機嫌な表情を作るユナに鬱陶しさを感じて、女って言うのはどうしてこう、と色々考えだした。

 何となく視線がそっちに向いたので、そうだよ、と答えると、誰と? とずけずけと聞いてくる。お前には関係のない年上の女とだよ、とぶっきらぼうに答えると、あっそう、と言われる。艶めかしいネオンの反射を地面に見ながら、そういえばユナとも入ったことのあるホテルだったなと思い出す。

「安いからね」と過去を振り返りながら言ってみると、

「そうね」とだけ返ってきた。

 信号が青に変わり、ユナが歩き出したので一緒になって歩く。別に目的地も目的も何もなかったが、これ以上濡れると風邪をひく、と妙に堅実的になって彼女の傘にとどまり続けようとしていた。

 駅までの道をそうやって歩きながら、時々車の弾く水を受けてあーあと思っていた。

「でも今一緒に居ないってことは、やって、それっきり?」

「お前には関係ないよ」

「捨てられたんだ」

「うるさいよ」

「へー」

 沈黙。

 不意にまた雨を頭に感じて、何事かと思い立ち止まる。振り返るとユナは真面目そうな顔をしながら、

「ヨリ、戻してやっても良いよ」

 と言った。

 雨に打たれながら、少しだけ考えて、

「結構です」

 と返事をすると、ユナは大きく体を曲げながら馬鹿みたいに声を張り上げて「ばーか」と叫んだ。

 それを笑って、

「お前の方が馬鹿だよ」と言った。

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