プロローグ
神様転生。
いつかオレにもくるくる思っていたけれども、今日このとき。
とうとうきました。信じるものは救われるってほんとなんですね。
『…長いこと神様やってきたが、ここまでアレな人生というものを体現したおぬしに感動した』
それが選抜理由でした。
この際理由なんてどうでもよいので、さっさと転生とか実行して欲しいんですが。
『まあ待て待て。あれだけアレな人生を送ってきたおぬしだ、気持ちは分からんでもないが、いまも腐れ外道の跋扈する『人生』そのものには絶望しておらぬのだな。…なんなら人間以外の、竜とか白狼とか、気高そうな存在への転生もできぬではないのだぞ』
きっと、今生の無理ゲーは、生まれたときのステータス異常が原因だったと思うんです。たぶん呪いとかかかってたんじゃないかと思うんです。
だから。
オレの思う『原因』を排除した人生をやり直したいんです。
『そっ、そうか』
超絶レベルのブサメンだったのが原因だと思うのです。
小さい頃の大やけどが原因で指とかうまく動かなかったのもそうだと思うんです。
PTSDで訥弁だったのも悪いんです。
運動オンチだってそうです。走るの遅いし飛べないし、ブタ亀とか言われてましたし。バスケの授業じゃ遊びでパスじゃなく玉ぶつけられましたし。
女の子をチラ見しただけで悲鳴上げられましたし。
『…分かった、みなまで言わぬともよい。おぬしが定められた天寿を全うして見せたことそのものがわしを感動させたのじゃ。その不幸な学生編が終った後の社会人地獄編、結婚詐欺法廷闘争編、まとめwikiもわしはすべて見届けておる。もう言わずともよい』
神様はもしかしたら鬼女板の住人なのかもしれません。
そうですか、ではもう何も言いません。
『わしが見てもっともエグかったのはクズ親絡みの誕生編と幼少期編じゃったが……PTSDになったおぬしはそれでも生きようとした。涙腺が決壊したわい』
神様は大変な大盤振る舞いをしてくれたようです。
本来ならひとつしか希望を叶えてくれないらしいのですが、好きなだけ言うがよいとか優し過ぎます。
『忌避されない程度に自然で美しい存在になりたい』
『みんなと遊べるくらいの人並みな運動能力が欲しい』
『どもらずちゃんと喋れるようにしてほしい』
『人から尊敬される才能があったら嬉しい』
希望を並べると、また神様がぶわっと泣き出した。思い出し泣きのようです。
『そんな願いでよいのじゃな……ああ分かっておる。その程度のささやかな望みだっておぬしにとっては『過大』なのじゃろう。その願いを叶えるに当たって、わしなりの解釈で加減をしてやろう。…そして肝心なおぬしの転生先は異世界じゃ』
真っ暗な、ただ神様らしき存在がまぶしく輝くだけの、何もない空間にノイズが走ったように見えたその一瞬の後、オレはなにか掃除機に吸い込まれるような感覚に襲われた。某マンガで炊飯器に吸い込まれる大魔王のような感じだ。
えっ、あっ、かみさまぁぁ。
『心配せずとも、じきに目覚めよう。いろいろと追加しておいてやるから、幸せな人生を歩むんじゃぞ。さらばじゃ』
そうしてオレは、めでたく転生を果たした。
ノクタで連載していましたが、エロくできない自分を発見いてしました。
R15として引っ越しました。