人間族と魔族
「斬られ役募集の広告で来てみたらこれかよ…」
「まあ、そう落ち込むなって、俺らの仕事と言えば、敵役しかないんだからさ」
この世界には二つの種族がいる。
人間族と魔族だ。
まあ、RPGのゲームとかでよく出てくる勇者が人間族、敵役が魔族だな。
こんな会話をしているから、よく分かると思うけど、俺たちは魔族に属している。
同じ小さなネズミからの進化ではあるが、森林や草原を駆け巡るのに適している人間族が先にこの世界に生まれ、その後、人間族によって発見された俺たち魔族は、基本的には山岳や地中と言った、人間族が住めないような所に住んでいる。
もっとも、世界的な大企業の社長の中にも、魔族はいたりするし、危険な職業、例えば、消防士や山岳救助隊といったところは、ほとんどが魔族だ。
ぶっちゃけて言わせてもらえば、このような職業につくのはごく限られたエリートで、その他大勢といえば、映画とかのエキストラやチョイ役として出る程度。
後は、アルバイトとか、魔族専門の会社とかに務めることが多い。
俺たちは、リード・ペーパー・ギガテックスという会社にいる社員だ。
通称RPG社は、映画のエキストラ斡旋を仕事としている。
今回送られてきたのは、映画の敵役で、登場3秒で主人公に切られるという役だ。
「はい、んじゃ行くよー」
休憩が終わって、監督が合図を出す。
「出番だぜ」
俺と相棒は、仕事へと出る。
「ま、仕事だしな。しゃーないか」
持っていたペットボトルをそのあたりの椅子に置かせてもらう。
「仕事にゃ、誇りがねえとな」
相棒は笑っていった。
「ああ、そうだな」
俺もそう言い返した。