プロローグ~皆さんサ終乙です。でも俺は転生乙です。
20年間生きてきた俺才子透過の人生で最も愛したものは何かと問われれば、答えは簡単だ。
ケヴィン・ダグラス。彼は外国の俳優さんでもなければ、漫画のキャラでもない。俺の人生とともに歩んできたソーシャルゲーム「マジック&コロシアム」通称「マジコロ」の初代最高レアリティキャラで国家闇魔術師という設定の男だ。
俺がなぜ彼の事を愛したのか、生憎俺はゲイじゃない。故に容姿が好みだったからではない。そしてケヴィンはこのゲームにおいて性能が特段高いわけでもない。俺が彼の事を好きになったのはこのゲームのストーリーモードにおける数々の彼の名言が所以だ。名言だと思っているのは俺だけかもしれないが、、、
【僕は戦う、僕は戦う、何度でも言う僕は戦う。僕は別に勇者アルスや賢者マギアのように優秀ではない。でもけっしてこのコロシアムに立ったからには戦いを投げ出さない。強い弱いとかそういうことを言うのは人の勝手だ。でもこの戦場で戦うかどうかそれを決めるのは僕の勝手だ。だから僕は戦う】や【勇者アルスの事を僕は愛している】からの【だから勇者アルスは僕が○した。本当に○○〇〇かった。】などだ。
部活動に励んだり好きだったあの子に告白したりあの子を、、、、する大事な場面俺はこの言葉たちを胸に励んできた。彼の言葉はいつも俺の背中を押してくれた。
そんな俺の青春ともいえるソーシャルゲーム【マジック&コロシアム】が極度のインフレによりゲームバランスが保てなくなり本日をもってサービスを終了する。だから俺は今日死んでもこのゲームをやめない。もし疲れて死にそうになったらケヴィンとともに心中する覚悟だ。
「シャアやるぞー!」
俺は小さな四畳半で自分に発破をかける。はたから見ればゲームごときに何を躍起にという感じだろう。だが俺はやる。俺は久々にマジコロを起動した。
ホーム画面にはいつもと変わらない、長い前髪を携え古風な杖を突き黒い国家魔術師専用のコートを着る少し陰気な黒い目をした青年が立っている。いつもと変わらない仏頂面だ。彼に似合うように俺のホームは黒目のゴシックな感じの部屋にインテリアを設定してある。
俺は早速バトルスタートのボタンを押した。
このゲームはマルチプレイ専用ゲームでプレイヤーは最初リーダ希望かサブキャラ希望かを選ぶ。そして八人バトルルームに集まったらマッチング完了。四対四で戦いが始まるという形だ。今日はサービス終了という事もあり、酒場のようなデザインのバトルルームにどんどんと人が入ってくる。そしてどんどん抜けていく。
どんどん抜けていく!?
焦った俺はチャットランを覗く。
【ケヴィンだけはないわーセンスがない。ネタキャラ使うにしても、もっといいチョイスあんだろ。なんでコストが馬鹿重い。あのクソ雑魚陰キャなんだよ、、、あんな奴のどこがいいんだよ】
人気キャラであり同じく最初のガチャのウルトラレアのキャラでもある勇者アルスの水着姿バージョンのアイコンの奴がそういって退出する。おい、そこまで言わなくてもいいだろ。ネタキャラのつもりで俺は使ってねえぞ、、、てかなんで、お前は水着バージョンあってケヴィンにはねえんだよ。しかしそれを伝える隙もなく居なくなっている。
【サ終の日にケヴィンは意味わからん。せめて、ネタキャラ使うにしてもキャラ人気ある五条悟りちゃんとかにしろよ。あいつはまじで苦手だわ。】
だからネタのつもりでは入ってねえよ、、、俺がそういう前にティア1であり鋼の断金侍という作品のコラボキャラでもある江戸輪亜土が自身の右につける刀で馬鹿にするエモートを送りながら退出する。彼がリーダーを務める江戸輪亜土スタンパーテー通称江戸スタンは王朝が長すぎて江戸時代ともいわれた。てかどんだけみんなケヴィンの事嫌いなんだよ。
【おぬしネタキャラ選びのセンスないなりね、、、しかもリーダー志望とかウケるでござる。わいだったらこいつを使う、アイアムモストペナルティ最強生物なり。】
そういった奴はティア3と言われるキャラで全キャラ史上一番火力の出ると言われている火炎王紅桜だ。実際はティア3に入るかは怪しいくらい弱いがロマン枠として人気があり使っている人は結構いる。そいつは自分のテヲを十分に自慢してから退室した。まさか同じネタキャラ使いにも馬鹿にされるとは、、、
俺はずっと24時間バトルルームに居続けた、しかし一向にその部屋に人が居続けることはなかった。
「なんてことだ、、、どんだけ人気ねえんだよ。そういえばこのゲームってサ終する割に意外と競技思考高めの奴が多いんだよな。コラボキャラと人気キャラの着せ替えキャラしか需要の無い超絶インフレゲーのくせに、、、あと勇者アルスファンが多いのも理由か、、、」
俺は結局サ終のその瞬間まで、ずっとゲームを開いていた。しかしマジコロはサービス終了のお知らせとともにメンテナンスに入る。
【皆さんサ終乙です!】
サイゼリアに描かれた天使のような絵に40台のおじさんがコラ画像のように雑に張られたこのゲームのプロデューサーダイケのアイコンのXからそうポストされた。ふざけた奴だ。ユーザーからはこのような破天荒な行動からおもちゃ扱いされていた。
「ほんとに終わったんだな、、、俺の青春。結局一回もケヴィンで戦うことは出来なかった。ハアーー眠い、、、寝るか、、、明日1限あるるし、、、」
ずっと24時間スマホの画面とにらめっこをしていた俺は眠くなりスマホを投げ捨て、ベッドではなく黄色の安っぽいソファの上で横になる。するとすぐに微睡み。だんだんと俺は深い闇の中に落ちていく。
◇◇◇
俺はゆったりと目覚める。そこにあったのは革の感触だ。ゆったりと目を開ける。寝ていたソファがなぜかゴシックぽい黒色の皮の物に代わっている。
「あれ?」
でもそのソファには買った覚えはないのになぜか見覚えがある。他の家具だってそうだ。ゴシック調のまるで俺がケヴィンのために用意したかのようなインテリア。
「まさかな、、」
俺はゆったりと洗面所があったであろう場所に向かう。そこにはしっかり洗面所があった。
「おいおい!嘘だろ、、、」
俺はその洗面所にある鏡にゆったりと体を向ける。するとそこには長い前髪を携え古風な杖を突き黒い国家魔術師専用のコートを着る少し陰気な黒い目をした青年がいつもと変わらない仏頂面で映っていた。
「これってもしかして異世界転生ってやつか?いやんなわけねえ俺の夢だ。」
そう思った俺は頬をつねる。しかし痛いだけだ。
「夢でこんなリアルな感触あり得んのか」
俺は独り言ちる。
「ていうかさ、、、」
「夢でもよくね、、、俺今ケヴィンに成れてる。こうなったら今日遊べなかった分夢の中で遊んだほうがお得じゃん、、、ほんとにケヴィンと心中できんじゃんね、、、」
俺は楽観的にそう考えた。




