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第2話:革命のプロトタイプ(後編)

東京・品川。如月重工本社ビルの最上階にある特別会議室では、重苦しい空気が漂っていた。

 円卓を囲むのは、如月家の分家出身の役員たちと、彼らを裏で操る外資系ファンドの代理人だ。


「……現社長、如月怜奈の行方不明から十二時間が経過した。規定に基づき、彼女を解任。私が新社長に就任する議案を採択したい」


怜奈の叔父にあたる如月泰三が、脂ぎった顔に卑卑しい笑みを浮かべて宣言する。

 だが、彼が採決の挙手を求めたその瞬間、ビルの窓ガラスが激しい振動と共に悲鳴を上げた。


「な、なんだ!? 地震か!?」


次の瞬間、強化ガラスを突き破って、一台の――あろうことか「中古のコンパクトカー」が会議室のテーブル中央にドサリと着地した。

 阿鼻叫喚の渦中、車のドアが静かに開く。


「……おじ様。勝手に私の席を片付けないでくださる?」


車から降り立ったのは、汚れ一つないドレス(エリスのナノマシンが修復済み)を纏い、威厳に満ちた表情を浮かべた如月怜奈だった。

 そしてその隣には、作業着のまま不敵に笑う和也。


「ば、馬鹿な……!? 札幌にいたはずのお前が、どうやって……いや、そもそもここは地上三十階だぞ!」


「空を飛んできたんだよ。……お前たちの古い常識と一緒にね」


和也がスマホの画面を空中にフリックすると、エリスが即座に反応した。

 会議室の全モニターに、泰三たちが裏で進めていた「技術売却の裏契約書」と、隠し口座の履歴が映し出される。


『マスター。ついでに、彼らが今朝食べた朝食のメニューから、過去の不倫の証拠まで全てリストアップ完了しました。……公開しますか?』


「いや、それは後でいい。……まずは、彼らに『新しい世界』を見せてやれ」


和也がスマホのエンターキーを叩く。

 瞬間、役員たちの目の前にあるタブレットやスマートフォンが、一斉に和也の「新技術」へと書き換えられた。

 バッテリー残量は「100%」から一ミリも動かず、通信速度はこれまでの数万倍。さらに、画面からは実体を持ったホログラムが飛び出し、如月重工の株価が秒単位で爆騰していく様子がリアルタイムで表示される。


「これが、俺と如月社長が作る『新しい日本』の標準だ。……お前たち、まだその腐った椅子にしがみつきたいか?」


和也の背後で、エリスのホログラムが不気味に微笑む。

 その圧倒的な「力の差」を前に、泰三たちは腰を抜かし、崩れ落ちた。


「佐藤和也さん……いえ、会長。……完璧だわ」


怜奈が和也の隣で、誇らしげに微笑む。

 翌朝、世界中のニュースは一つの話題で独占された。

『日本の老舗メーカー、如月重工が「エネルギー革命」を宣言。一回の充電で一生使えるバッテリー、実用化へ』。


だが、この熱狂を、不快そうに画面越しに見つめている少女がいた。

 都内某所、薄暗い部屋で無数のモニターに囲まれた少女――榊結衣。


「……このコード、ありえない。人間が書いたものじゃない。……見つけた。佐藤和也、お前は何者?」


天才ハッカーの指が、キーボードを叩く。

 和也の快進撃を止めるのか、あるいは加速させるのか。

 技術チートによる日本再興の物語は、二人のヒロインを巻き込み、さらなる加速を見せ始める。

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