第7話 倉庫にあるのは、だいたいロクでもないものだ
倉庫街は昼間でも薄暗い。
積み上げられた木箱と閉ざされた鉄扉が、空気を重くしていた。
「……やっぱ来る場所じゃねえな」
リオが小さく呟く。
「情報屋が言う台詞じゃないだろ」
「今回は例外だ。
ここ、明らかに“変”だ」
ラウルも同感だった。
音がない。風が流れていない。
『魔術残滓を検出』
(どんな?)
『隠蔽・拘束系が混在しています』
(つまり)
『素人の仕業ではありません』
ラウルは一歩、倉庫の中へ踏み込んだ。
――その瞬間。
床に描かれた魔法陣が、淡く光る。
「っ、罠――!」
リオが叫ぶより早く、
影が“床から”立ち上がった。
人型。だが、顔がない。
『敵性存在を確認』
(戦闘力は?)
『低〜中。
ただし拘束を主目的としています』
(厄介だな)
ラウルは、ため息混じりに前へ出た。
「リオ、下がれ」
「お、おい!」
影が一斉に動く。
触れた空気が、刃のように鋭い。
――だが。
ラウルの動きは、それより速かった。
一歩。
踏み込み。
拳が、影の中心を正確に打ち抜く。
音は、遅れてきた。
影は霧のように霧散し、
倉庫に静寂が戻る。
「……は?」
リオが固まる。
『拘束魔術、無効化済み』
(ありがとう)
『当然です』
残った影が再び襲いかかる。
だが、結果は同じだった。
数秒後。
倉庫には、ラウルとリオだけが立っていた。
「……なあ」
リオが、乾いた笑いを浮かべる。
「お前、ほんとに何者だ?」
「便利屋だよ」
「嘘つけ」
ラウルは肩をすくめた。
『初戦闘、問題なく完了』
(問題しかない気がするけどな)
だが一つ、確かなことがあった。
噂は、もう噂じゃない。
この街の裏で、確実に“何か”が動いている。




