第1話 辺境の便利屋と相談相手
バレスティア王国。
シュロス大陸の端に位置する、辺境の村。
ラウル・アルトリアは、朝の空を見上げて伸びをした。
「今日も平和だなあ」
十七歳。
村の便利屋の息子。
そして――誰にも知られていないが、権能持ちだ。
「ノート。今日の依頼は?」
――《確認》
頭の中で、いつもの声が応じる。
――《北の森で薬草採取中の村人が未帰還》
――《西の柵の破損修理》
――《森の奥で未確認魔物反応》
「三つ目、急に物騒じゃない?」
――《放置した場合、村が襲撃される確率は68.4%》
「具体的すぎるんだよなあ……」
文句を言いながらも、ラウルは森へ向かった。
便利屋とは、
誰かが困る前に動く仕事だ。
やがて、倒れている村人を見つける。
「大丈夫ですか!」
息はある。
だが、様子がおかしい。
――《警告》
――《寄生型魔物を確認》
「……ノート?」
――《解析完了》
――《宿主は致死状態》
胸が、少しだけ冷える。
「助かる可能性は?」
――《3.1%》
低すぎる数字だった。
――《提案》
来た。
――《宿主ごと対象を排除してください》
静かな声。
感情は、どこにもない。
ラウルは、即答しなかった。
「……却下」
――《了解》
否定も、説得もない。
「他に手は?」
――《魔核のみを破壊してください》
――《成功率は低下します》
「それでいい」
斧を構え、踏み込む。
一瞬の攻防。
狙い通り、魔核を砕く。
魔物は崩れ、寄生は解除された。
村人は倒れたままだが、生きている。
――《結果を記録》
「……助かったな」
村人を背負い、森を出る。
「ノート」
――《応答》
「さっきの判断、どうだった?」
――《非効率です》
――《ただし、成功と判定します》
「そっか」
それで十分だった。
ノートは冷酷だ。
正しくて、最短で、最適な答えしか出さない。
だからこそ――
選ぶのは、いつだって自分だ。
ラウルは、そう決めている。
答えを持つ相談相手と、
答えを選ぶ人間として。




