第0話 異世界ノート
読んでいただきありがとうございます。
無双要素はありますが、少しシリアスもあります。
気楽にお付き合いいただければ幸いです。
目を開けた瞬間、世界は白かった。
空も地面もない。
音も、匂いも、温度すら存在しない。
それなのに、水野大地は理解していた。
「ああ……これ、死んだな」
横断歩道。
信号は青。
次の瞬間、視界を埋めたヘッドライト。
社会人としては納得しがたい最期だが、
状況証拠は揃いすぎていた。
「異世界転生ってやつなら……まあ、いいか」
半ば投げやりにそう呟いた、その時。
――《質問を検知しました》
無機質な声が、空間に響いた。
感情の揺れは一切ない。
男とも女ともつかない、淡々とした声。
「……誰だ?」
返事の代わりに、白い空間の中央に
一冊のノートが浮かび上がった。
黒い表紙。
題名も装飾もない。
だが、不思議と分かる。
――これは、自分のものだ。
――《権能【異世界ノート】を付与します》
「権能?」
――《はい》
即答だった。
「ちょっと待て。もう少し説明とか――」
――《本権能は、質問に対する解答および最適行動の提示を行います》
「要するに?」
――《相談相手です》
相談相手。
あまりに軽い言葉に、思わず笑いそうになる。
「それ、強いのか?」
――《生存率および成功率は大幅に上昇します》
「へえ」
――《ただし》
その一言で、空気が変わった。
――《私は最適な情報のみを提示します》
――《あなたの感情や倫理観は考慮しません》
便利だが、危険。
そんな匂いがした。
「最終的に決めるのは?」
――《あなたです》
その答えに、少しだけ肩の力が抜けた。
「なら、いい」
水野大地は笑った。
「世界最強の相談相手がいるなら、なんとかなるだろ」
――《結論。
あなたの選択次第です》
白い世界が、ゆっくりと崩れていく。
こうして彼は――
異世界ノートという、最強で最も遠慮のない相談相手と共に、
異世界へと転生した。




