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身分を隠して逃亡中の公女ですが、他国で逆ハー築いてます。  作者: 専業プウタ@コミカライズ準備中


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42/56

42.私の初恋の人を侮辱しないでください。

「私の初恋の人を侮辱しないでください。アーデン侯爵令嬢が薬を作れるような優秀な男の子をお身内にひき入れたのには理由があります。実は彼女の母親ミリア・アーデン侯爵夫人は誰より強い魅了の力を持って生まれてしまった方なのです。カルマン公爵家では紫色の瞳に生まれていない女の子は皇族が欲しがらないので通常殺されます。しかし彼女はとんでもない広範囲で強い魅了の力が使えることが生まれてすぐに分かったので、赤い瞳を持ちながら生かされました。しかし、そんな恐ろしい力を持って生まれたことが本人に伝わってしまっては恐怖で命を絶たれてしまうかもしれません。そこで彼女には魅了の力を使えることは伝えられず、彼女の精神を恐怖により支配し魅了の力を使わせて周りを操らせようという手段が取られました。公爵の命令に背くと酷い虐待にあうという恐怖心です。13日間監禁されたこともあると聞きました。しかし、部屋に閉じ込められている彼女がお腹が空いたと思うだけで、外にいる男性の使用人は食事を持っていくので問題なく過ごせてしまうのです。彼女はカルマン公爵家の最終兵器として、政敵であったレナード・アーデン侯爵の元に婚約者として送り込まれています。アーデン侯爵家の人間は歴代アカデミーの首席卒業生ばかりで知能が高いせいか魅了の力にかかりません。しかし最終兵器である彼女ならば彼を操れるのではないかと思われていました。アーデン侯爵は彼女と婚約した瞬間から彼女を花嫁修行と称して自分の邸宅に囲い込みました。とても危険な行為です。しかし、やはり天界の王子様が悪の公爵家に負けることなどはありませんでした。囲い込むことで彼女の恐怖心を一切取り除いてしまったのです。そのことでカルマン公爵家は最終兵器を失ってしまいました。でも彼女の魅了の力が消えたわけではありません、きっと私とは比べ物にならない程、多くのことに苦しんでいると思います。お母様のそんな姿を見てお優しいアーデン侯爵令嬢が何もしないはずがございません。お母様が魅了の力を持っていることが露見すれば、周りから警戒されます。薬を作れる天才的な子を身内にひきいれてお母様のための薬を作ろうとなさったのでしょう。彼女はいつだって人の為に動く人です。自分のことしか考えられないあなたとは違うのです」


レイモンドが驚いたように私の話を聞いていた。

自分がいかに何も知らずに人を侮辱していたかに気がついたのだろう。


「エレノアの初恋はフィリップではないのですか?エレノアはそちら側の人だったのですか?エレナ・アーデンが初恋なのですか?」

気の抜けたような感じになったレイモンドが尋ねてきた。


「私、アーデン侯爵令嬢のこと初恋の人と言いましたね。恩人と言おうとしたのです。でも、初恋が正しい気もしてきました。そちら側という表現は適切ではないですよ。アーデン侯爵令嬢に性別など存在しませんから。」

私の言葉に納得していないのか、レイモンドは首をまだ傾げている。


「では、私がアーデン侯爵令嬢と出会った日のことについてお話ししますね。レイモンド、あなたは自分のことしか考えられない人間ですよね。でも、私になりきって話を聞いてください。なぜ彼女に性別が存在しないかが分かるはずです。その日は公女のくせに毎日同じドレスを着ていることを父に怒られ暴力をふられました。私が公爵邸で過ごした4年間は、すでにカルマン公爵家名誉失墜直前の暗黒期です。経済的にも困窮し、ドレスを1着しか買って貰えていませんでした。散々暴力をふったあと、自分の理不尽な行動に気がついたのか父がドレスを買いに行くと言って私を連れて街に出ました。そこでアーデン侯爵家の眩いばかりの母と娘に出会します。自分の娘でもおかしくないエレナ・アーデンに悪態しかつけない父が恥ずかしくて、玩具屋を眺めていたらエレナ・アーデンが店ごと買ってくれました。その豪快さとかっこよさにときめきながら眠りにつくと、起きたらエレナ・アーデンが私を誘拐してくれていたのです。私は驚きのあまりどうして誘拐してくれたのかと尋ねると、あなたが可愛いからよとクールにこたえられました。私の立場で彼女に恋をしないことなどできないことがお分かり頂けたでしょうか」


レイモンドは私の話を聞くと私を抱きしめてきた。


「エレノア、エレナ・アーデンのことも苦しい時間のことも私が忘れさせます」


レイモンドはそう言いながら、私の唇を親指でなぞりだした。

どうやらまともには話を聞かず、また性欲に囚われていたらしい。


「結構です。私にとって彼女はいつだって力を与えてくれるヒーローのような存在です。レイモンド、到着したので私から離れてくれませんか ?身動きが取れません」


私が彼を追い払おうとすると、彼はまた誘拐犯のようにヒョイっと私を抱き上げてきた。

歩けないからフィリップ王子にお姫様抱っこしてもらったという設定にしたのを思い出した。


少しでも面白いと思っていただけたら、ブックマーク、評価、感想、レビューを頂けると嬉しいです。貴重なお時間を頂き、お読みいただいたことに感謝申し上げます。

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