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身分を隠して逃亡中の公女ですが、他国で逆ハー築いてます。  作者: 専業プウタ@コミカライズ準備中


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23/56

23.好きだの嫌いだのは変わりやすくどうでも良い感情です。

「サム国には海があるのですよ。エレノアは海が好きですか?」


レイモンドの言う通り私は海を見るのが初めてだった。

アラン皇帝陛下に代替わりしてから急速に広がった帝国領土だが、その前は内陸に位置する帝国とは呼んで良いのか考えるほど小さな領土しかなかった。


私が知っている帝国は内陸の小さな帝国だ。


今日は突然レイモンドに連れてきたいところがあると言われて、アカデミーの前で待ち伏せされて馬車に乗せられた。


私はアカデミーの毎日の授業が終わると、邸宅で待ち構えているレイモンドと時を過ごしていたから彼とは莫大な時を過ごしていることとなる。


私としては私と過ごす時間があるのなら、、政務や世界情勢を勉強する時間に充ててほしい。


私は婚約破棄する猶予を1年間レイモンドに与えた。

あれから、半年間彼は政治について熱心に学んできたと思う。


元々優秀な地頭もあるから、学びはじめれば習得は早かった。

積極的に政務に取り組み出した彼に周りの貴族の彼に対する見方も変わってきた。


レイモンドは女性関係を整理したらしい。

だからといって過去したことは決して消えることはない。

きっと弄ばれた貴族令嬢からたくさんの恨みをかっていることだろう。


「初めて海を見ました。レイモンドとフィリップ王子殿下の瞳は国王陛下と同じ海色の瞳といわれているから色の予想はついていましたが、これほどに海とは壮大なものだったのですね。」

海とは風が強いものなのか、体を吹き飛ばされそうになって思わず縮こまる。

そんな私をレイモンドが後ろから抱きしめてきた。

「今日は特別に海風が強い日です。穏やかな日もあるのですよ。」

私を覗き込んで微笑みかける彼は今日どんな意図があって、アカデミー授業後の私を引っ張り出したのだろうか。


いつのまにか敷物が、砂浜の上にひかれていた。

そこに座るようにレイモンドにエスコートされる。

座ったと同時にサンドイッチが出てきて私は怖くなり震えあがった。


「お腹がいっぱいで食べられませんわ」

おそらく私のために用意しただろうサンドイッチを前にレイモンドに言う。

私は自分の陣地であるアゼンタイン侯爵邸で彼をもてなすのは良いが、レイモンドの用意した食べ物を口に入れるほど彼を信用できてはいなかった。


食事に毒を入れられたり虫や砂を入れられていたカルマン公爵邸での虐待をされていた日々が蘇えり、震えが止まらなくなってきた。


「エレノアは食事制限中なのですか?とても成長中な気がします」

レイモンドがわざと私の胸に視線をやったのがわかった。


今の視線は私が恐怖心に駆られ、落ち込んでいるのを見て気分を変えさせようと気遣った視線だ。


「レイモンド、あなたは本当に生まれ変わる気がありますか?私と婚約破棄をして、リード公女と婚約したらどうでしょうか。彼女はとても素晴らしい方ですよ。私を実の妹のように可愛がってくれた理想の女性です」


私の言葉を聞いたレイモンドは堪らなくなったような表情をして私の頬に手を添えてきた。

私が彼に触れられるのは不快だと言ったことを忘れてしまったのだろうか。


「エレノア、リード公女に誘拐されて殺されかけましたよね。そんな女が理想の女性なのですか? あなたは男性に対して厳しい割に、女性には夢を見てませんか?」


彼の言葉に伏せていたはずの誘拐事件を彼が知っていたことに驚いた。


「そうかもしれません。でも私は男を操れます。男性の発する言葉は私が操って発せさせられた言葉だと感じてしまうのです。だから女性の言うことは信じられるし、本当の言葉が聞けると期待してしまいます」


誰にも話せない本音を、軽蔑しているレイモンドには話せてしまうのは皮肉なことだ。


「エレノアはフィリップが好きですか?あなたは人の中身の魅力について評価していて、フィリップについてはとても評価しているように思いました」


海風にたなびく私の紫陽花色の髪をレイモンドがおさえてくる。

以前は彼に髪を触られるのが不快で仕方なかった。


今、不快感を感じないのは、彼が唯一の私の本当の理解者だと感じているからだろうか。


「婚約者の弟に恋愛感情を抱くような不埒な女に私が見えるのですか? レイモンド、好きだの嫌いだのということは変わりやすくどうでも良い感情です。それよりも自分がサム国民のために何ができるかに集中して頂けませんか?」


私が言った言葉にレイモンドが微笑んだ。

彼の瞳は本当に海色だった、まるで背景の海の澄んだ風景と混ざっていく。


「でも、ビアンカ様と一緒になった方が良いという私のアドバイスは的確だと思いますよ。」

私は沈黙にたえられなくなり、口を開いた。


「それは、こちらからお断りするわ!」

突然聞こえてきた声に振り返ると、ピンク色の髪をバッサリと短くしたビアンカ様がそこに立っていた。


少しでも面白いと思っていただけたら、ブックマーク、評価、感想、レビューを頂けると嬉しいです。貴重なお時間を頂き、お読みいただいたことに感謝申し上げます。

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