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身分を隠して逃亡中の公女ですが、他国で逆ハー築いてます。  作者: 専業プウタ@コミカライズ準備中


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11.俺の恋のライバルはサム国なのかよ。

「ビアンカ様と王太子殿下の件に関しては伏せておくつもりよ。そのようなことが明らかになれば、ビアンカ様に良い縁談が来なくなるわ。私とハンスでは幼過ぎて一晩ここで過ごしたところで噂にもならないわね。婚約解消の件は考えているけれど、近くにいれば王太子殿下の弱みも握れると思うの。王太子殿下が国のことを考える人間に変わってくれれば良いけれど、そんな可能性はほぼなさそうね。サム国の未来の為にも彼を国王にしてはいけないわ」


私の言葉にハンスが固まっている。


「えっ、サム国の未来?それよりも、エレノアの噂がたつのは良いのかよ!」

ハンスは動揺しすぎて、私の髪をかき混ぜはじめた。

不快ではないが、意味がわからない。


「孤児院の野良猫に手を出された公子として噂がたつ自分の心配はしないのかしら。ハンス、私がサム国の行く末を心配しているのはおかしいかしら? 子供らしくない? でも、私はこの国に幸せにしてもらったという恩があるからこの国を守りたいの」


ハンスに私の正体について話してしまおうか迷った。

彼なら正体を明かしても、秘密にして受け止めてくれそうだ。


王太子殿下のように秘密を握ったとばかりに、私を脅迫してきたりしないだろう。


むしろ、強い味方になってくれるかも知れない。

そして、彼の好意を受け止めても私が彼に期待したり求めたりしないことに安心した。


彼に対する今の私の気持ちは恋ではないのだ。

彼のことはルークを愛するように愛せそうだ。


「帝国から逃げてきたエレノア・カルマン公女だから、サム国に恩を感じてるのかよ。俺の恋のライバルはサム国なのかよ。」

ハンスは私の頭をひとしきりかき混ぜた後、私を抱きしめてきた。

それにしても彼は私がエレノア・カルマンだということを知っていたのだ。


知らないふりをして、私に接していたということに驚いた。


「知っていたのね。私はサム国を守りたいの。今、帝国はアラン皇帝陛下に代わって、世界を侵略しはじめたわ。7カ国がこの半年で帝国領に変わったのよ。それに新しい帝国法も、他国の人間にはとても魅力的に映るはずだわ。成人した帝国民なら皆、帝国の要職に就けるチャンスを貰えるの。新しく宰相になったのは帝国にとっては敵国だったエスパルの平民出身の女性よ。おそらくこれから、どんどん優秀な人材が帝国に流れていくと思うの。他国の人間も帝国の要職試験を受けられるようになったら、サム国からも多くの人材が流れてしまうわ。サム国民は自分の国が一番優れていると思っている人間が多いと思う。でも、客観的に国を見たら既にサム国自慢の女性の権利でさえ帝国の方が保証されていることに気がつくはずよ。そんな時にレイモンド王太子が王位に継いで政務も適当に複数の女を囲ったら、国民の心はますます離れていくわ」


私が矢継ぎ早に話す言葉にハンスが戸惑っている。

無理もない、サム国の貴族の子が後継者として国のことを考え始めるのは12歳でアカデミーに入学してからだ。


「6歳の時、アゼンタイン侯爵夫妻が話していたのを聞いてからエレノアの正体は知っていたよ。それまではエレノアがあまりに貴族らしい振る舞いをするから、前世がお姫様だったのかと思っていた」

ハンスの前世はお姫様の言葉に思わず吹き出してしまう。


「ハンスには私の特別な秘密を教えようかな。私をサム国に逃がしてくれた恩人は皇帝陛下の婚約者のエレナ・アーデンなのよ」


私はハンスと同じように、私の前世があるかのように話してきた恩人の話をしようと思った。

今日はもう移動するには外も暗い。


この小屋で私の恩人の話を彼にしようと思った。

彼には私の考えを理解してもらった上で、私の一番の味方になってもらいたい。


「エレナ・アーデンって帝国の絶世の美女だろ。アラン皇帝陛下って俺らと2歳しか変わらないのに帝国の絶世の美女をものにできるなんてすごい男なんだな」


ハンスの言葉にまた笑いそうになる。

少年皇帝に絶世の美女という組み合わせを王太子殿下は女が少年を誑かしていると表現したが、ハンスは全く逆に捉えているようだ。


私はアラン皇帝陛下がどれほど恐ろしい人間か知っている。

だから、おそらく正解はハンスの方だ。


誰かに唆せるレベルの人間ではないのがアラン皇帝陛下だ。

彼が世界を侵略しているスピードから考えても、サム国が帝国の手に渡るのは時間の問題だ。


「雰囲気的にはフィリップ王子と似て柔和で優しい感じよ。でも、6歳のアラン皇太子に会ったとき感じたのは彼は恐ろしい人間だということ。フィリップ王子はみんなから好かれているけれど、それなりに年相応に扱われてるわ。でも、6歳の時のアラン皇太子は彼の祖父くらいの年の貴族からも皆が彼を尊敬し愛し跪いていた。まるで彼の周囲の人間の感情が彼によってコントロールされているように見えた。私はカルマン公女として彼の女になることを実父から望まれていたのだけれど、到底怖くて無理だと思ったわ」


私は帝国での苦しい時間を思い出しながら話した。

それに気がついたのか、ハンスは私を心配そうに見つめていた。


少しでも面白いと思っていただけたら、ブックマーク、評価、感想、レビューを頂けると嬉しいです。貴重なお時間を頂き、お読みいただいたことに感謝申し上げます。

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