表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/9

水曜日

水曜日は週の真ん中だ。折り返し地点。


妹の朝の動きが遅い。シャワーの時間が三分長い。疲れているのだろう。


彼女の表情を見たい。でも、見られない。俺が起きるのは午前十一時だから。彼女はとっくに出勤している。


だから、音だけで推測する。足音の重さ。ドアを閉める音の強さ。そこから、彼女の疲労度を測る。


気持ち悪いだろうか。兄が妹をこんなに観察するのは。


でも、止められない。知りたいのだ。彼女が俺をどう思っているかを知るために、彼女の状態を知る必要がある。


彼女が疲れているなら、俺に対して優しくなる余裕がないかもしれない。彼女が元気なら、俺を説教するかもしれない。


そんなことを考えている。


午後、ハローワークの封筒を手に取る。


まだ開けていない。先週届いたものだ。期限は来週。


開けるべきか。


開けたら、何が起こる? 就職活動をしなければならなくなる。面接に行かなければならなくなる。そして、また、あの世界に戻らなければならなくなる。


誰の役に立っているか分からない労働。ただ時間を売るだけの労働。


それは、本当に労働なのか。


でも、金銭が発生する。それが労働の定義だ。社会ではそうなっている。


だから、俺は今、労働していない。


でも。


でも、俺は、何もしていないわけではない。


皿を洗っている。洗濯をしている。買い物をしている。親の介護保険の手続きをしている。田中さんの電球を替えている。見守りグループに報告している。


これらは、何なのか。


暇つぶしなのか。それとも。


封筒を、部屋の隅に戻す。見えるところに。忘れないように。でも、手に取らないように。


この矛盾した配置が、俺の心理状態を表している。


午後六時。夕食の準備をする。今日はパスタにしよう。妹の好きなトマトソース。


誰かのために料理を作る。これは、何だろう。


愛情? 義務? それとも、ただの暇つぶし?


分からない。


でも、作る。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ