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何がしたかったのだろう、

作者: 林 彩斗


 「生まれたばかりのころに戻りたい。」


 「何も考えていなかった頃に戻りたい。」


 「人生を終わらせたい。」



 「僕は何がしたかったのだろう、」


 僕は考える。

 そして逃げる。


 僕は自分の能力に甘えていた。生まれた時から他の人より少し運動神経が良い、頭が良い、周りを見て行動ができる、ただそれだけだったのに。


 僕は水に顔をつけることができない。まだ小さいとき市民プールでおぼれた記憶が蘇ってくるからだ。小学生まではそれを隠して授業に参加していた、できないことを知られたくない完璧主義者だったのかもしれない、そしてサボるという概念を知らなかったのだろう。中学生になり、よく体育をサボるようになっていった。一年生のころはまだプールしかサボっていなかった。だが、他の人に友達に自分が失敗しているところを見せたくない、という気持ちが次第に強くなり、二年生のころには他の競技もサボるようになっていた。もちろん、体育の成績は悪かった。母からは「運動神経良いのになんでこんな成績取るのか」と疑問を持たれていた。幸いなことに両親は成績にとやかく言う人たちではなかったので成績のことで怒られることはなかった。


 中学三年生、受験の時期。僕は高専の推薦入試を受けたいと思っていた。僕は提出物は期限以内に必ず出し、自分的にはテスト勉強も頑張り、高専に提出する内申点に入る最後のテストでは自己最高得点を叩き出した。だが、推薦を受けることはできなかった。体育でサボらなければ受けることができたかもしれないというほどの内申点が少し足りないというとても悔しかった記憶だ。学力試験を受けることになり、それなりに勉強をしていた。


 そして、受かった。


 そのときは僕もうれしかった。家族でお祝いもした。クラスのみんなもお祝いしてくれた。だけど、みんなは僕の努力を認めてくれたくれたわけじゃなかった。

 他の人の受験勉強に比べると僕はそれほど勉強していないと自覚はしていた。だけど、認めてほしかった、自分なりに頑張ったのに、と思ってしまった。


 入学式の日、そして入寮の日。僕は楽しみだった。環境も周りの人も変わって僕も変われるのではないかと思っていた。

 淡い期待だった。

 人はそんなにすぐには変われないと気づいてしまったのだ。今まで自分の能力に甘えてきたつけが回ってきたのだろう。周りは努力してきた、僕は努力できていなかったという現実を突きつけられたような気がした。


 自分が嫌になった。


 今までも自分が嫌になることは多々あった。人生をやりなおしたい、終わりにしたいと思ったことは何度もある。だが、そんなこと比にならないような自己嫌悪が襲ってきたのだ。


 そして僕は逃げた。


 ずっとネットに入り浸っていた。現実よりも仮想空間のほうがずっと楽だ。



 今日はテスト前日だ。なのに僕は小説を書いている。初めての小説をだ。

 僕はしたいことがたくさんある。なのに僕はネットに入り浸る生活を送っている。


 僕は何がしたいのだろう。


 僕は何がしたかったのだろう。


 僕は生きる意味をまだ見つけれていない。

 見つけれる気もしていない。



 これは弱い僕の内側だ。

 僕はこれからもこの世から消えれずに弱い僕のままで生きていくのだろう。

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