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第1章:迷い込んだ深き森

1節 新たなる依頼

「さて、次の冒険はどうするかな。」


リベルナのギルド本部にある掲示板の前で、俺は手をポケットに突っ込みながらぼやいた。ヴァリオとの戦いが終わり、しばらくギルドで休息していた俺たちだったが、さすがに体が鈍り始めていた。


「大地、しっかり探しなさいよ。適当に選んだら、また厄介ごとに巻き込まれるわよ?」


ティリアが弓を背負ったまま、俺の横で呆れたように言う。


「おいおい、適当に選んでるわけじゃないぞ。ちゃんと次の依頼を慎重に……あっ、これ良さそうだ!」


俺が指差したのは、掲示板の一番端に貼られた依頼書だった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

依頼内容:迷いの森の異変調査

依頼主:村の長老

報酬:金貨50枚(状況次第で追加報酬あり)

概要:村の近くにある“迷いの森”で不可解な現象が発生中。

詳細不明だが、モンスターの活性化が確認されているため、調査と対処を求む。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「迷いの森……また不穏な名前だな。」


俺が依頼書を手に取ると、ティリアは少しだけ眉をひそめた。


「迷いの森……聞いたことがあるわ。この地域では有名な場所よ。濃い霧に覆われた森で、入ると方向感覚を失い、二度と出られなくなるって言われているわ。」


「二度と出られなくなる……それ、ヤバいだろ!」


俺は思わず依頼書を戻そうとするが、ティリアがクスリと笑ってそれを止める。


「でも、面白そうじゃない?」


「いやいや、何が面白いんだよ!」


「最近、森の異変がさらに激しくなったって話もあるわ。モンスターが増えて村人たちに被害が出ているらしいから、放っておけないでしょ。」


「そりゃそうだけど……また厄介ごとに巻き込まれそうな気しかしないんだよなぁ。」


俺は頭を抱えながらも、結局その依頼を引き受けることにした。


2節 森への道

村に向かう道中、俺たちはまたしてもモンスターに襲われながらも、何とか目的地にたどり着いた。村は小さな集落で、20軒ほどの家が立ち並んでいる。


「ここが依頼主の村か。」


「ええ。でも、どこか静かすぎるわね。」


ティリアが周囲を警戒しながら言う。村にはほとんど人影がなく、どの家も窓を閉め切り、扉に鍵がかけられているようだった。


「なんか、不気味だな……。」


俺が呟くと、一人の老人がゆっくりとこちらに歩いてきた。彼が依頼主の長老らしい。


「おお、冒険者殿か。よくぞ来てくださった。」


長老は疲れた様子で頭を下げる。その顔には深いシワが刻まれており、どこか不安そうな表情を浮かべていた。


「依頼を受けてきました。森の異変って、具体的にはどんな状況なんですか?」


俺が尋ねると、長老は小さくため息をつきながら答えた。


「数週間前から、森の霧が急激に濃くなり、中に入った者たちが次々に戻らなくなっています。それだけでなく、森から出てきたモンスターが村を襲うことも増えてきたのです。」


「モンスターまで……それは確かに厄介ですね。」


ティリアが腕を組みながら言う。


「ええ。村人たちも怖がって森に近づかなくなりましたが、このままでは村が持ちません。どうか、森の中で何が起きているのか調べていただけませんか?」


長老の真剣な頼みに、俺は小さく頷いた。


「わかりました。俺たちでできる限り調べてみます。」


森に入る準備を整えた俺たちは、村の外れにある入口へと向かった。


「迷いの森か……また面倒なことになりそうだな。」


「大地、何度も言うけど、こういうのに巻き込まれるのはもう慣れてるでしょ?」


ティリアが軽口を叩きながら笑う。その余裕がどこから来るのか、俺には理解できない。


「慣れるも何も、俺だって普通の高校生だったんだからな!」


「だった、ね。」


俺たちはそんな会話をしながら、森の入口に足を踏み入れた。そして――


森の中は噂以上に異様な雰囲気だった。濃い霧が立ち込め、昼間だというのにほとんど視界が確保できない。足元には不気味なツタが絡みつき、木々は巨大でねじれている。


「……これ、想像以上にヤバいな。」


「ええ。普通の森じゃないわね……気をつけて、大地。」


ティリアが弓を構え、周囲を警戒しながら進む。俺も剣を握りしめながら、慎重に足を進めた。


だが――


――ガサガサッ!!


突然、茂みの中から何かが飛び出してきた。


「大地、来るわよ!」


ティリアが叫ぶ。その声と共に姿を現したのは、森のツタと一体化したようなモンスターだった。木と植物が絡み合い、そこに目と牙が生えた異形の存在だ。


「なんだこいつ……!?モンスターなのか?」


「ヴァインビースト……!森そのものが生み出した魔物よ!」


ティリアが矢を放つが、ヴァインビーストはツタを伸ばしてそれを弾き返す。そして、牙を剥いて俺たちに襲いかかってきた。


「こいつ、どうやって倒すんだ!?」


俺は必死に剣で応戦しながら叫ぶ。その戦いの中で、頭の中にいつもの声が響いた――


【創造魔法】が発動します。想像したものを具現化します。


「よし……これで終わりだ!」


俺は“火を纏った剣”をイメージし、その力を具現化する。そして、その剣でヴァインビーストのツタを焼き切り、渦巻く霧の中へと突き進んでいく――。



3節 森の霧に潜む謎


迷いの森に足を踏み入れた瞬間、周囲を覆う霧の濃さに俺たちは息を呑んだ。森全体が不気味に静まり返り、木々はねじれるように伸び、その影が霧にぼんやりと浮かび上がっている。


「……本当にどっちが進むべき方向か、全然分からないな。」


俺が周囲を見渡しながら呟くと、ティリアは慎重に歩きながら答えた。


「これが“迷いの森”と言われる所以よ。霧に覆われているだけじゃなく、方向感覚や時間の感覚まで狂わせる力が働いているの。」


「方向感覚も?じゃあ、下手に進んだら一生出られなくなるじゃないか!」


俺が慌てて声を上げると、ティリアは冷静に肩をすくめた。


「だから私たちが調査するのよ。この森で何が起きているのか……必ず原因があるはずだから。」


「原因ねぇ……いや、何も起こらないことを祈るよ。」


俺は剣を握りしめながら、心の中でそう呟いた。


森を進むにつれて、空気が徐々に変わっていくのを感じた。濃い霧だけでなく、どこからともなく低い音――まるで何かが呻くような音が響き始めたのだ。


「おい、ティリア……なんか変な音が聞こえるんだけど。」


「ええ……私も感じる。この森の“中心”から響いているみたいね。」


「中心って……俺たちそこに向かってるんだよな?」


「そうよ。この霧の正体を探るには、どうしてもそこに行かないと。」


「おいおい、また厄介ごとに突っ込むパターンじゃないか……。」


俺が文句を言いながらも歩いていると――突然、霧の中から何かが飛び出してきた。


――ガサガサッ!


「来るわよ、大地!」


ティリアが素早く弓を構え、その方向を睨む。俺も剣を抜き、身構えた。そして、霧の中から現れたのは――


「うわっ、なんだこいつ!?」


それは、巨大な木のような体を持つモンスターだった。全身をツタや苔に覆われ、腕のような枝を大きく振り回している。


「フォレストゴーレム……!」


ティリアがその名を呟く。


「ゴーレム!?こんなデカいやつ、どうやって倒すんだよ!」


俺が叫ぶと、ティリアは矢をつがえながら冷静に答えた。


「フォレストゴーレムは“核”が弱点よ!胸のあたりにある光る部分を狙って!」


「核ね……簡単に言うけど、あのデカさで狙えるかよ!」


フォレストゴーレムは大きな腕を振り下ろし、地面を叩きつけてくる。その衝撃で足元が揺れ、俺たちは体勢を崩しながらも必死に回避する。


「大地、私が注意を引くわ!その間に核を狙って!」


ティリアがゴーレムの背後に回り込むように動きながら矢を放つ。その矢はゴーレムの表面に突き刺さるが、苔やツタに吸収されてしまう。


「硬すぎる……!」


俺も剣を構え、ゴーレムの足元を狙って斬りつけるが、硬い樹皮に阻まれてダメージを与えられない。


「どうする、どうすりゃいいんだ……!」


焦る俺の中で、またしてもあの声が響いた。


【創造魔法】が発動します。想像したものを具現化します。


「そうだ、これしかない……!」


俺は心の中で“ゴーレムの硬い体を貫く武器”をイメージした。そして――


手の中に現れたのは、燃え上がるような赤い輝きを放つ“炎の槍”だった。


「よし、これなら!」


俺は槍を握りしめ、全力でフォレストゴーレムの胸元――核がある場所に向かって突進した。


「これで終わりだ!」


俺は槍を振りかざし、ゴーレムの胸元にある光る部分――“核”に向かって突き刺す。そして――


――ズガァァァッ!!


槍が核に命中すると、フォレストゴーレムの体が震え、ツタや苔が崩れ落ちていく。やがて核が砕け散ると、巨体はその場に崩れ落ち、完全に動かなくなった。


「やった……!」


俺は息を切らしながら、その場に膝をついた。


「お疲れさま、大地。よくやったわ。」


ティリアが駆け寄り、俺の肩を叩く。その顔には少し安心したような笑みが浮かんでいた。


だが、その瞬間――


――ゴォォォ……


森全体が再び震え始めた。霧がさらに濃くなり、呻き声のような音が大きくなる。


「おいおい、まだ終わりじゃないのかよ!?」


俺が叫ぶと、ティリアは険しい表情で森の奥を見つめた。


「……原因は、もっと奥にあるわ。フォレストゴーレムはただの“門番”だったみたい。」


「門番!?じゃあ、まだ本番が残ってるのかよ……!」


俺はげんなりしながらも剣を握り直し、立ち上がった。そして、ティリアと共にさらに森の奥へと足を進める――そこには、森を覆う霧の“真実”が待ち受けているはずだ。



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