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転生について

作者: 白鶺鴒

私の名前は田中雄大。社会人である。

私には幼い頃からひとつ隠し事があった。

私には"前世の記憶"というものが存在しているのである

とはいえ、だからといってなにか特別なことがあるのかと言われると何も無いのだが。。。


私の前世は田窪翔馬という1人の男性であった。

彼の存在を一言で表すのであれば"堕天"だろう。

成績、運動、容姿、どれをとっても優れた点はなくどこにでもいる平凡な人間だった。

あえて彼の良いところをあげるのであればあまりにも愛情が深いことだろうか。オンラインゲームで仲良くなっただけの赤の他人が困っている、と言うだけで給料の半分を即座に援助したのは我が事ながら馬鹿だと思う。



彼は25の時1人の女性と恋に落ちた。将来を誓い毎夜事に愛を語り合った。

だが彼女は他の男も愛してしまった。

あろう事か3人で暮らそうと言い出した。

彼は絶望し死を求めた。が、それを止めたのも彼女だった。

自分のせいで人が死ぬのが嫌だという理由で自死を止めたらしい。

彼はその場から逃げ出した。

その後、彼は正しく抜け殻のようになっていった。

とはいえ表面上は変わったところもなく周りの人も彼が以前のことを乗り越えたのだろうと考えていた。




私は最初彼について一言で表すなら"堕天"だ 。そう言ったと思う。

3年ほどたった頃だったと思う。

気がつけば彼のからっぽの抜け殻にはヘドロのような濁った感情がひしめいていた。

彼女の名前は分かる。変わっていなければ住所も、新しい彼の名前も分かる。

この3年で金は貯まった。


そして、彼の中でプツッと小さな音がした。



今思えばあれが理性というものが切れる音だったのだろう。

それからの彼の行動は速かった。

仕事の伝で知ったアウトローな存在に金を払い彼女を拉致した。

場所は彼女の家であり、同居していた親族も全て手足を結び口を塞いだ状態で椅子に座らせていた。

彼は彼女に対し、

「これがお前の選択した道だ」

そう発し、彼女の前で1人ずつ殺していった。

そして最後に彼女の手足のスジを切り、彼女の前で笑顔で自殺した。




その後彼女がどうなったかは知らない。

私は死んだあと気がついたら田中雄大となっていた。

ただ、寝て起きたら別の人間になっていた、そう感じている。


よく人は死ねば天国や地獄へ行く、悪いことをすれば報いがあると言うが、私に限って言えばそれは事実ではなかったようだ。

だからなのだろう、最近よく思うのだ。

人というリソースが有限であるように魂というリソースも有限なのではないかと。

使い終わった魂は1度洗濯し新品同様にしてから使い回しているのではないかと。

現在世界の人口は増加の一途を辿っている。

であれば有限であるはずの魂も人間を作るために消費され少なくなっているはずである。

だからこそ生産が追いつかず出生率が大きく低下しているのではないかと。


天国、地獄という場所が魂の保管庫であるとするのであれば残量が少ないため私は死後そのまま転生に使われたのではないか、大変失礼な考えだと理解しつつも私はそう考えてやまないのである。

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