1-4 頭が痛い
部屋は返されたが、ぬいぐるみは・・・・・・。みんな、守れなくてゴメン。痛かったよね、苦しかったよね。
決めた。猛勉強して、東都大へ進もう。この家を出るには、それしか無い。寮は、個室にすれば良い。いや思い切って、買うか。
高校は、公立進学校を受験する。春奈の頭じゃ、逆立ちしたって入れない。だから選んだ。
東都大より、西都大進学率の方が高い。まぁ、当たり前か。近いし。
「夏生、いいかな。」
「いいよ。」
部屋に入るなり、キチンと正座。いつもなら胡坐をかくのに。頼み事でも、あるのかな?
「あのさ。」
「うん。」
「私に投資してください。」
三つ指ついて、御願いするなんて。夏美、本気だ。
「何に使うの?」
「私、東都芸術大学の、建築学部を目指す。」
「東芸って、三浪が当たり前。らしいけど。」
「そう。東都大の方が、楽に入れる。」
東芸に合格するには、高い画力が必要。独学では合格できない。遅くても高校一年から、受験専門の絵画教室に通わなければ。
夏美は絵が上手い。絵画コンクールで、何度も金賞を取った。それだけの実力があっても、難しいんだ。
「分かった。出資する。応援する。」
「幾らかかるか、聞かないの?」
「年間百万くらい、かな。」
「何だかんだ入れたら、それくらい。」
「二人とも合格、おめでとう。」
「ありがとう。」
「ありがとう、父さん。」
長男と三男は、東都大。次男は西都大、長女は東都芸大。揃って、国立大に進学か。
「寮の申し込みは、済ませたのかい?」
「朝萱にある、中古物件を買ったんだ。築年数は古いけど、シッカリ管理してある。」
「リフォームは、済ませたのかい?」
「大規模改修を、去年。余った部屋は、貸し出し中。」
「そうか、それは良い。」
通う大学は違うが、近い。どちらも朝萱からなら、地下鉄一本で通える。夏美を家から出すのは何だが、夏生が一緒なら心配ない。
「ズルい。」
「何が。」
「私も一人暮らし、したい。」
問題は、春奈だ。
国公立なんて、夢のまた夢。それどころか、高校卒業も危うい。誰に似たんだ。私は西都大、美弥子は白金女子大。まぁ、音楽学部だが。
「春奈は内部進学、するんでしょう?」
「ママ! 内進したら一人暮らし」
「駄目だ。ココから、通いなさい。」
「パパのイジワル。じゃぁ花大、いぃかないっ。」
何のために、花畑女子に入れたと思っている。オマエの頭で入れるのは、花大だけだ。ハァ。頭が痛い。






