1-3 大丈夫か?
「何て子なの、親を脅迫するなんて。」
・・・・・・は?
母は父を愛していない。政略結婚だと、割り切っている。父は母を大事にしている。それなりに。
愛する長男と親兄弟は、東都にいる。ドライな次男は、アテに出来ない。義父母と双子は、問題外。味方になってくれるのは、末娘だけ。
双子の性別が同じなら、思い悩む事はナイ。しかし男女、それも中学生。同じ部屋を使わせるのは、よろしくない。
屋根裏はあるが、物で溢れかえっている。片付けたとしても、部屋としては使えない。通風孔は有るが、窓が無い。
夏は蒸し風呂、冬は冷蔵庫。下手すりゃ、冷凍庫。熱中症で死ぬか、凍死する。
跡継ぎとスペア、政略結婚に使える娘が、二人。要らない三男など、どうとでも。とはいえ死なせては、世間体が悪い。
病死なら兎も角、窓の無い屋根裏収納に押し込め、殺した。なんてコトが知られれば、大騒ぎになる。
「ねぇ、どうすんの? 父さんに軽蔑されるか、夏生に部屋を返すか。」
夏美の声が低い。
「あ」
「旦兄さんは、嫌だって。聞いたよね、忘れた?」
わぁ、スゴイ顔。次女の我儘を許すか、次男の主張を認めるか。
「で、どうすんの。」
旦、参戦。勉強ドコロじゃ、ナイよね。
「ねぇ、旦くん。嫌だと思うけど」
「嫌だね。」
別に夏生と同室でも、構わないさ。けどクソ女の我儘は、受け入れられない。
アンタ女部屋、見た事あるか? ほとんどが、ソイツの物。夏美が可哀そうだよ、ホント。
それに何だよ。ぬいぐるみ切り裂いて、楽しいか? マジ怖いんだけど。
「男のクセに、ぬいぐるみなんて」
「男だろうが女だろうが、関係ない。人の物を、許し無く捨てるな。」
「夏美!」
「ナニ。」
「オレ、夏美に一票。」
「旦くん?」
「ボクも、夏美に一票。」
「はぁ?」
「お爺様もお婆様もマトモなのに、何でコンナのが。」
「女子大出の御嬢様にも、ハズレは居るんだよ。」
次男と長女、母親を貶す。
「だいたい、キモ男のクセに一人部屋って。生意気!」
・・・・・・?
「キモ男は女なんだから、女もどきと一緒でもイイ。違う?」
「夏生のドコが、女なんだ? ぬいぐるみ持ってるダケで、女装趣味とか無いし。無いよな?」
「無いよ。」
尊兄さんと旦兄さんは不仲だけど、ボクは違う。二人とも、良くしてくれる。話もする。
「キモ男ってダケで、キモイの!」
「ワケ分かんねぇ。オマエここ、大丈夫か?」
人差し指で、頭をコンコン。