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1-2 何て言うかな


あきらくん、あのね。」


「嫌だ。」


母親をギロリと睨み、部屋へ。それから扉を、バタンと閉めた。



「春奈の我儘、許すワケ?」


うるさい、女もどき。」


「夏美、お姉さんでしょう?」


「だから何。」



母は、長男教の信者。五歳上の長兄は、母を毛嫌いしている。だから西都大では無く、東都大へ進学した。


三歳上の次兄は、祖父と父の母校である西都大を、受験するらしい。夏美とボクは、二卵性の双子。春奈は、年子。



母は愛する長男に相手にされない寂しさを、末娘を溺愛することで紛らわしている。次兄は常に長兄と比較され、卑屈な性格に。


長兄も次兄も眉目秀麗、成績優秀。父は兄たちを競わせることで、能力を伸ばそうとした。その結果、兄弟仲はサイアク。


末子の妹は、黙っていれば美少女だ。幼少時から甘やかされて、我儘モンスターに育った。


優秀な兄と、要領の良い妹に挟まれた双子。それがボクたち。




「で、この女の我儘。許すの?」


「妹に向かって、この女ですって!」


「姉に向かって『女もどき』って、言ったケド?」


「夏美、春奈に謝りなさい。」


「はぁ?」


「親に向かって、何て子なの!」



狂っている。どう考えてもオカシイ、この母娘ははこ。なぜ春奈を、特別扱いするんだ。長男教のクセに、何なんだ。




「ウルサイ! いい加減にしろ。」


部屋から顔だけ出し、次兄が叫ぶ。


「ごめんなさいね、あ」


バタンッ。



クッ。無視されてやんの。




「そぉおだっ。アンタら双子なんだから、同じ部屋。それでイイよね、ママ。」


良かねぇよ、十四だぞ。


「で、どうすんの。お・か・あ・さ・ま。」


母の顔が、グニャリと歪んだ。






思えば、哀れな人だ。父とは、政略結婚。見合いの一年後、結婚。挙式と披露宴のみ、新婚旅行なし。仕事人間は当然のように、仕事を優先した。


箱入り娘が一人、東都から葭谷よしやへ。


友達も、知り合いも居ない。女子大、音楽学部を出た御嬢様。音楽以外、何もしてこなかった。当然、家事能力ゼロ。


結婚して直ぐ、長兄を妊娠。出産の翌年、次兄を妊娠。男児二人を産んで、やっと認められた。一息ついた頃、双子を妊娠。出産後、また妊娠。あっという間に、五児の母。




仕事優先で、家庭を顧みない夫。泣き叫ぶ双子に、年子。長男教に入信したくも、なるのか?


その長男に嫌われて、末子を猫可愛がり。デロデロに甘やかす。



優秀な兄たち、溺愛される妹。その間に挟まれた双子は、放置された。だから夏美とボクは、助け合う。


親に相手にされなくても、寂しくない。見下されても、気にしない。嫌な気持ちには、なったけど。




夏生なつき。変な気、起こさないでよ。」


それが母親の言うコトか? 春奈を叱れよ。


「父さん、何て言うかな。」


夏美の目が、ギラリと光った。


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