1-1 勝手に決めるな
男らしさって、何だ。女なら責められない事が、男だと責められる。男なら泣くな、メソメソするな?
男は何があっても、泣いちゃイケナイのか? どんなに辛くても苦しくても、男ってダケで、耐えなきゃイケナイのか?
優秀な兄たち、溺愛される末妹。その間に挟まれた、ボクたち双子は放置された。だから助け合う。双子は、ずっと一緒。
長男教の母、我儘モンスター娘に振り回されながら、懸命に生きる。どんな時にも、自分らしく。
男らしさってナニ、女らしさってナニ。男がカワイイ物が好きだと、気持ち悪い? 甘い物が好きだと、格好悪い?
・・・・・・ナンデ、キメツケルノサ。
「オンナ男! 逃っげろぉ。」
キャッキャと騒ぐ猿ども。
「食らえ!」
ゴンッ。
泥団子の中に、石が入っていた。打ち所が悪ければ、死に至る。中学生にもなって、まだ分からないのか。
虐められる方が悪い。虐められるには、理由がある。そんなの、嘘だ。虐める方が悪い。虐めは暇潰し、虐めはゲーム。的なんて、誰でもイイのさ。
カワイイ物が好き、甘い物が好き。それだけ。スカートが穿きたいワケじゃナイ。ワンピースが着たいワケじゃナイ。
カワイイ物を見れば、幸せな気持ちになる。フワフワ甘い物を食べれば、幸せな気持ちになれる。モコモコぬいぐるみを抱きしめれば、幸せな気持ちになるんだ。
女なら責められないのに、男だと責められる。
「ただいま。」
ガサガサ、ドサッ。ガサガサ、ガサガサ。
「まさか。」
ダッと階段を駆け上がると、見たくなかった光景が。怒りを通り越して、悲しくなった。
ゴミ袋に詰められた、大事な友達。切り付けられ、綿を抜かれ、無残な姿に。
解ってる。コイツら、ボクが嫌いなんだ。袋に詰め込むだけなら、出せるから。また撫でたり、抱きしめられるから。そうさせないように、こんな酷い事を。
この子たちが、何したんだよ。何か言ったか? 迷惑かけたか? どの子も、部屋から出してない。お行儀よく、棚に並んでた。それだけ。なのに!
「な、んで。こんな、こんな。」
ボロボロ涙が、止まらない。
泣いたって、どうにもならない。知ってる、解ってる、それでも止まらないんだ。
男なら泣くな、メソメソするな? 男は何があっても、泣いちゃイケナイのか? どんなに辛くても苦しくても、男ってダケで、耐えなきゃイケナイのか?
「おかえり、キモ男。アンタの部屋、あたしが貰うから。」
兄に向かって、キモ男って。
「春奈、勝手に決めるな。」
「お兄ちゃんでしょ? 譲りなさい。」
この母娘、狂っている。
ウチは4LDK、一軒家。両親、兄二人、妹二人、ボクの7人家族。長兄は東都大へ進学し、学生寮に入った。次兄は高校生。残りは、中学生。
両親、兄、妹たちで三部屋。ボクは4畳半の和室を、一人で使っていた。春奈に奪われたら、次兄と相部屋に?
「何を騒いでいる。勉強の邪魔ダケは、しないでくれよ。」
「旦兄さん、おかえりなさぁい。」
ドコから声、出してんだよ。
「夏生の部屋で、何してんだ。」
「この部屋、私が使うの。」
「だから、勝手に決めるな。」