生き方について考える
翌朝。
今日は昨日のこともあって、しっかり休めるようにと全ての予定を両親がキャンセルしてくれていた。
おかげでこれからのことについてしっかり考える時間が出来て、とても助かる。
両親はとても愛情深い人達で、お互いの事も愛し合っているし、ライラを含む3人の子供たちにも溢れんばかりの愛情を注いでいる。
そんな両親を見て育っているからこそ、ライラは結婚とは愛し愛されるとても幸せで尊いものだと信じて疑わなかった。
政略結婚ばかりの貴族社会において、そんな夫婦などひと握り、いやひとつまみくらいのとても珍しいものだとも知らずに。
だから、自分が皇太子と婚約するかもしれないと聞かされた時も心の底から喜んでいた。
きっと、それが後々のライラにとっては苦痛になっていたのではないかと思う。
というのも、ライラの婚約者である皇太子、エードラム・アメトリノ・インペリアルは、両親の愛なんてものは知らずに育っていく。
この国の皇帝は代々政略結婚で、生まれてきた子は乳母によって育てられる。
言葉を話すようになると、早々に王となるべくして教育を施されていくために、愛情とはなんなのかを知らないまま大人になる。
そしてまた自分が王となれば政略結婚をした相手と後継者を産み、また乳母によって育てさせる。
そうして、“人”ではなく、ただ国のことを考え、行動する、“皇帝”として育つ。
それ繰り返すことにより、ここまでこの国を大きくしてきたのだ。
皇帝として見れば、歴代の人たちも皆国民からは敬われ、他国からは畏れられる、理想的な君主となるが、
夫や父にはなれない。そう育ってしまっているから。
そんなエードラムと、結婚に夢見るライラでは、すれ違って当然だと思う。
まして、ゲームでは、途中から現れた主人公の女の子が、ある意味機械的とも言えるエードラムの心に愛を芽生えさせていく。
そんな光景を目の当たりにしていくライラの心境はどれほどのものだったのだろうか。
そう考えると、ライラが罪を犯していくには充分な動機になり得るのかもしれない。
つまり、結婚に夢見るライラとしてエードラムと結婚すると、ライラは幸せにはなれない。
エードラムに愛を芽生えさせる役割を、自分が担えるとも思えないし、いくらゲームで主人公がどう愛を教えたかを知っていても、主人公だからできることだとしか言えないし。
ゲームでのキャラたちの性格をよく知っている私からの見解だと、ライラが幸せな結婚ライフを送ることが出来る相手は別の人だと思う。
それは隣国の皇太子で、名前は、ルーカス・ウィルヘルム・バシレウス。
機械的に皇帝を育てるこの国に反して、ルーカスの国『フレゥール国』では、王妃が王子を育て、幼い頃から国民と接する機会も多く設ける為に、代々人情に厚い国王で、ルーカスも例に漏れずとても愛情深いキャラクターとして人気が高かった。
自分が愛する人を甘く甘く溺愛する彼なら、ライラの理想的な夫婦にも間違いなくなれる。