ライラの目覚め
、、、冷たい、、、
全身びしょびしょだし、洋服が纏わりついているうえにとても重く感じる。
いくらなんでも川に突き落とすことは無いんじゃないの??
あいつほんとに神なのかな?神のフリしたタチの悪いタイプの小悪魔とかだったりして。
ーーーーーイラーーーーー
イラ???いら???
ええ。してますともイラッと。とてつもなくね。ええ。
ーーーラーーーーーイラーーーーーライラーーーー
、、、、????ん?ら、、?いら??何だろう何か言ってる??
「ーーー、ライラッ!!」
ハッ!!!!??
突然しっかりと大きな声を認識して驚くと同時に目を開けた。
(あ、、、また綺麗な空。
と。
たくさんの人。)
沢山の人が私の顔を覗き込んでいた。
「ライラ、、、ライラ!!よかった、目を覚ましたのか。」
真横にいる男の子が心配そうな顔をして語りかけてくる。
「、、ライラ様、、、本当によかった、、、」
「ライラ様!わかりますか??お身体痛いところありませんか??」
その他の周りにいる何人かの大人たちも皆安心した様子で声をかけてきた。
突然知らない人達に囲まれてしまってわけが分からない。
とりあえず状況を確認するために重い体を何とか起こして周りを伺うと
そこはどうやら広い池?湖?のほとりにいるようだった。
自分の体を見ると、さっきまで白いワンピースを来ていたはずなのにフリフリのドレスを着ている。
私の好みで言うと、控えめに言って嫌いなタイプだ。
「ライラ?どうした?やっぱり身体がどこか痛むのか?」
また語りかけてきた男の子に視線を移す。
美形だ、、、、。いやそうじゃなくて、、、知らない子だけどなんだか見覚えもあるような、、、
あと皆私の事ライラって呼ぶけど、ライラって誰?私なの?
でもライラって名前知ってるなぁ。めっちゃよく目にしてた気がする。
そうだなぁ、、、あれは、、、ゲームだ。
私が人生を諦める理由の一つにもなったあの大好きだったゲームで見たなぁ。
たしか、、、悪役の令嬢で。
そう思った瞬間に一気に記憶を理解した。
これまでの“ライラ”の記憶が蘇ってきて、“私”の記憶の中のゲームに出てくる悪役令嬢ライラと一致した。
さっきから語りかけてくる男の子はライラの婚約者でこの国の皇太子。
あ、厳密に言うと現時点ではこれから婚約者になる人で、ゲームの中では婚約者だった人。
周りにいるのはライラと皇太子それぞれの従者達だ。
今日はライラと皇太子の婚約成立に向けて、親睦を深めるという目的で用意された湖デートのようなものだった。
それで湖に来たライラは初めてのボートで嬉しくなってしまったが為に勢いよくボートに乗り込もうとしたままバランスを崩して湖に落下。
そのまま溺れて、従者に救われて、今に至る。とまあそんなところ。
「ライラ?話すことも苦しいようだ。医者を早く!!!」
そんな風に一人で状況把握に頭をフル稼働させすぎていた私があまりにも返事をしなかったせいで、男の子いや皇太子、名前は、そう、エードラムがいよいよ私が具合が良くないのだと認識したようでまた慌てだした。
「エードラム様。大丈夫です。
ご心配をおかけしてしまって申し訳ございません。
少し驚いてしまっていただけですので、どこも痛みません。
ですのでお医者様は呼んで頂かなくて結構です。」
これ以上ことを大きくしないように急いで返事をする。
「本当か??」
「ええ。本当にです。ただ服も濡れてしまいましたし、身体もとても冷えるので、勝手ではありますが本日はここまででもよろしいでしょうか?」
「もちろんだ。このままでは風邪をひいてしまうだろうし早く帰ろう。」
そう言うとエードラムは従者に指示を出して直ぐに帰路へと馬車を走らせてくれた。
自分の馬車で従者がくれた毛布に身を包みながら、私はただただ見慣れないような知っているような外の景色を眺めていた。
家に帰ったら、とりあえず現状の記憶と状況の整理しないとな、と考えながら。