黄泉の国(1)
そうして私は死んだはずなのに、なぜ意識があるのだろうか。
しかもこんな初めてくるような場所で。
と考えて直ぐに納得した。
(あぁ、ここが黄泉の国というものか)
自分の体を見下ろすと服は白いワンピース1枚で、靴も履いていない。
裸足でも、生い茂る草のおかげか痛みは感じない。むしろ心地よかった。
(、、、っあ!!!、大福はっ!?!?)
ふと気づいて辺りを急いで見渡すが大福は見当たらなかった。
(こんな広い世界に1人になるくらいならせめて大福が一緒にいて欲しかった、、、)
そう思うとまた涙が溢れてきてそのまま膝を抱えて泣いた。
しばらく泣き続けて心が少し落ち着いた頃、ようやく歩き出す決心をつけることが出来た。
(死んでまで泣いていたら意味が無いよね、、
このままここにいても仕方が無いし、とりあえず前に進まなきゃ、、、
どこかにたどり着くのかも分からないけど、、)
少なからず時間が経っていたはずだが景色も空の色も何も変わっていない。
空の色と風に背中を押されるように未莉は1歩踏み出した。
しばらく歩いて行くと綺麗な川が流れていた。
向こう岸まではパッと見50メートルくらいだろうか。
透き通る水は穏やかに流れている。
試しに片足を入れてみるとふくらはぎくらいまでの深さしかないようだ。
水温も、冷たすぎずとても気持ちがいい。心まで浄化されるような気がした。
(これなら歩いて渡れるね。)
1歩1歩、水底の石を踏み外さないように気をつけながら慎重に歩いた。
(結構来たよね?もうそろそろ渡りきる頃かな??)
そう思い前を見上げて、、、、
動きを止めた。
いや、正確に言うと動けなくなった。
さっきまで誰もいなかったはずの対岸に、見知らぬ男が立っていた。