表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/9

07

 次の日から、シャルロッテはリア先生の授業に出席した。

「おはようシャルロッテ」

「おはようルト」


「ルト、ごめんノート貸して。今までの授業出てないから」

「いや、別にいいんじゃないかな」

「え?」


ふわっと魔力が動いてリア先生が入って来る。

「みなさん、おはようございます。さあ、表に出ましょう」


ラルム先生が講義型なら、リア先生は実践型だった。

ルトのノートを貸してといった時の微妙な反応で察するべきだった。


なぜ、参加を断られていたのか、シャルロッテは身にしみてわかった。

__この授業、危ないわ。


気を抜いたらやられる。模擬戦を中心に組んだ授業は、大変だったが、とても分かりやすかった。


アンネが今は前に立って、男子生徒と向き合っている。

アンネは模擬戦ではまだ勝ったことがなかった。


リア先生は、勝者にも敗者にも等しく解説を入れていく。

「__であるからして、アンネさん、重要なのは度胸ですよ」

「……っはい……」


アンネはすでに涙目だ。

「シャルロッテさん」

「はい」

「アンネさんの傍にいて差し上げて。今日は特別に許可します」


 シャルロッテはアンネの傍に行くと、その手を取った。アンネの手は震えていた。そして、見ると猫のような妖精も長い耳を伏せ、プルプルと震えている。


__召喚士の感情は、召喚獣に伝染する。


「落ち着いてアンネ。」

「シャルロッテ……」


「アンネ、逃げてばかりではダメだわ。将来は正式な召喚士になるんでしょう?」

「でも、私怖くって……」


「なら尚更よ、その怖いものと、あの子を一人で戦わせるの?」

「え?」


「アンネ。世の中は安全じゃないわ。召喚獣を守れるのは召喚士しかいないのよ」

「私が、守る」


「そうよ。傷つける為じゃないわ。あの子を守ることを思い浮かべて」


アンネの震えが収まっていく。

「私、やるわ」


その日、アンネは初めて、模擬戦で互角の戦いを見せた。



 そうこうしているうちに月日は流れ、シャルロッテたちは二年生に進級した。


「ねえ、ヴァル」

「なんだ」

シャルロッテは気になっていることがあった。

いつも一緒にいるヴァルフリートだが、姿を消すことが度々あったからだ。夜の間姿を消すのは、シャルロッテに気を使っているのではないかとも思えたが……。


「ヴァルは、その、私の前から消えている時ってお家に帰っている状態なの」

「ふむ」


ヴァルフリートは渋い顔をした。

「言いたくないなら言わなくていいんだけど」


「それには、まず俺がどういう存在なのか説明する必要があるな」

「話してくれるの?」


「次の課外実習、どこに行くか決まったか?」

「まだよ」


「北の、そうだな、クロエ村にしてくれないか」

「わかったわ」


そこに行けば、何かがわかるというのだろうか。

二年生からは、課外実習が組み込まれていた。それは、実際に外に出て、世の中の現状を知り、慈善事業をする、というものだった。


「生まれ故郷を見に帰るという話はよく聞くし、大丈夫だと思う」


申請を出そうと校舎に向かうと、アンネとルトに出会った。

「久しぶり、アンネ、ルト」

「久しぶりシャルロッテ」

「本当だね。最近課外実習が続いているから」


「シャルロッテは、次にどこに行くか決めたかい?」

「クロム村に行こうと思って」

「え?」


アンネが真っ青な瞳を瞬かせて、聞き返した。

「私も行きたいと思っていたの。一緒に行ってもいい?」

「ふたりとも、そこに何かあるのかい?」


最近ではすっかり物怖じしなくなったルトが、落ちて来る眼鏡を押し上げながら聞く。

「私たちの故郷なのよ」

シャルロッテは当たり障りなく答える。


「へえ。僕も行こうかな。気になる噂もあるしね」

「噂?」

「なんでも、クロム村のあたりに、化け物が出るらしい」

「ばっ化け物?」


アンネが引きつった声を出した。

「化け物というかお化け?」

「やめてちょうだいルト。アンネが怖がっているわ」


「シャルロッテは怖くないの?」

シャルロッテの袖を掴みながらアンネが言った。


「怖いというか、気になる、かな」

ヴァルフリートの意味深な言動と噂は、関係があるのだろうか。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ