ヴァイスの怒り
ヴァイスはジークフリートの次を待った
マリーローズを横に抱いたままだが負担はない
そんなやわな鍛え方はしていない
マリーローズは何事かわからないまま首にしがみついたままだ
遡ること少し前
陸に上がる前にヴァイスはマリーローズに一つだけ協力をお願いした
ただ、話が終わるまでしがみついていて欲しいというもの
マリーローズは首を傾げたが否はない
ヴァイスにならしがみつく事に嫌悪がない
精霊はヴァイスが呼ぶまで姿を現さない事を前提に陸に上がる瞬間をシャインの力で大きな光を起こし隠し、誰にも見られないように浜辺に上がる
ヴァイスは指示を出したあとマリーローズを抱え上げる
マリーローズは驚いたがこれならしがみつくもの自然だ思いながらとヴァイスの言うことに従うことにした
ヴァイスの言う演出
マリーローズはそれが何か分からないがヴァイスが悪いことをするなど想像ができないので言葉が少なく理解ができなくともヴァイスの言うことを素直に聞くことができた
それほど、信頼を寄せていた
時を戻してジークフリートはヴァイスから発せられる怒気に体をこわばらせながらも一番先頭に立ち言葉を紡いだ
「その方がどのような方かご存知ですか?」
ヴァイスは答えない
無言でジークフリートを睨みつけるだけだ
ジークフリートはヴァイスの無言を否定ととった
「その方はこの国の大公令嬢マリーローズ令嬢。本日私の船で遊覧していたところ海が突然荒れてしまい、その際、海に落ちてしまい私どももお探ししていたところなのです。お体も心配です。こちらで医者に見せたい。心配であるなら貴方も一緒していただいても構いません。こちらにお願いできませんか?」
ジークフリートは事実を一部省略して説明し、それでも自分たちはマリーローズに危害を与えるつもりなく引き取りたいことを伝える
だが、ヴァイスは動かない
「礼は望むだけさせてもらうことを誓います。どうか」
「ウルセェ…」
ヴァイスの怒気が膨れ上がりジークフリートは後ずさる
人の感情に機敏であれと育ったジークフリートだからこそ、その恐ろしさはその場にいる誰よりも強く感じる
それに、声は低く小さかったにも関わらず、はっきり聞こえたからこそ恐ろしかった
「嘘つくんじゃネェ。俺は知ってんだヨ」
ヴァイスの声は今度は全員に聞こえた
嘘は言っていない
ただ、襲われたことを言わなかっただけだという言葉は誰も発せない
「海が荒れタァ?それだけじゃネェだロ!!」
「まっ待ってくれ!確かに荒れただけが原因ではない!だが、それは!」
「うるせェ!俺はお前らの誠意って奴に言ってんだヨ」
なぜそれを知ってると言いたかったロジャーの言葉はヴァイスによって打ち消された
誠意
真実を偽りなく、隠すことなく教える事
理解すれば自分たちは目の前のヴァイスを信用しているか?と問われれば初めて見た相手にそれは難しいとルーセン以外が思う
必要最低限の情報を与えただけに過ぎない
この場だけ上手くいけばいいと判断したジークフリートを責めることはできない
「貴殿の不服は当然ながら、話をさせて欲しい。頼む」
ルーセンが声を上げる
ヴァイスはまたも無言で答える
「貴殿は、かの事件でマリーローズ様を庇い怪我をした少年ではないか?ならばこの度の非礼は深く詫びる!頼む!私たちの話を聞いて欲しい」
一同がルーセンに視線を向ける
かの事件
何を指すのかわからない
「私のいう少年だったのなら貴方がマリーローズ様に危害を加えるわけがないと私は確信している。先にジークフリート殿が述べたとおり、貴殿がいても構わない。私たちはマリーローズ様の身を心配しているに過ぎないことを理解して欲しい」
「どの口が言いヤガル。海賊に襲われたことを伏せやがッテ!俺が居なかったらコイツがどうなってたと思ってヤガル!」
「そっそれは、理解しているが、」
「身元不明のあなたに全てをお伝えすると?マリーローズ様が関わる事、つまり国家機密だ。ルーセンはあなたのことを知っているようだが、初対面の我らが全て話すことがあり得るものか!」
ルーセンがヴァイスの言葉にどもるとロジャーが反論を返す
正論だ
初対面のヴァイスをいきなり信用するようでは爵位を継ぐなどできるわけがない
「ッハ!オメェラ分かってネェナ!俺はコイツを危険な目に合わせたオメェらを信用してネェ。信用してネェオメェラに黙って返すほど俺はお人好しじゃネェんダヨ!!」
不可抗力とはいえマリーローズを危険にさらした身に覚えのあるメンバーは口を閉ざす
そこまで言われる筋合いはないと言いたいがヴァイスの醸し出す空気が言えない
何かとても大きな、人知では語れない何かを背後に背負っているようだ
神話に出てくる神獣さえ彷彿とする気配にベンガルさえも動けない
「俺はコイツが安全ならとは思ってる。ケドナ!危ない目に合うツーなら話は別ダ。俺がコイツを安全な場所に連れて行く!」
「「「「「「?!」」」」」」
「俺には力がある。誰にも邪魔させネェ!」
マリーローズをコイツと呼ぶことも十分不敬ではあったが、言い出せないでいた
だが、今回の発言は不敬ではすまない
国家反逆罪と問うには十分な発言
言葉を失うには十分だった
そして力があるという言葉
それはこの状況から、いや、力があるからこそ、大公が国で二番目の地位を持つ爵位と知っての発言であれば、一国家を敵に回しても良いという
全員が背筋が凍った
読んでくださり、ありがとうございます
次回投稿は12/19を予定してます
もうすぐクリスマスです
今年も仕事してます




