救出劇2
プロローグ部分がやっとおわりますた
やっとあのこたち成長させられる
よかった
ぺレインがドアノブに手をかけた瞬間、中から大きな音がする
普通に押しても開かない扉にぺレインはすぐに答えを導き出す
獣人の力をもってすれば開けれないこともない
しかし、僅かにでもかかってしまう時間
その間にマリーローズを人質に、ドアを開けなくした主に物理的に手の内に拘束されてしまっていては身の保障が危うい
「皆さんはこれを開けてください。私は外から単独で突入という手段に移ります」
相手の、虚をつく作戦
兵士はぺレインの指示に頷く
ぺレインはそれを見てから急いで外に向かう
部屋の配置からこのあたりと窓を見ると白いカーテンの隙間に銀色の刃が見える
ぺレインは瞬時に足に力を込め窓を突き破って突入したが、その時、窓から見えた銀色のそれは殆ど見えなくなっていた
・・・・
「………」
「……」
「ッチ!邪魔しやがって!くそガキィ!!」
マリーローズは何が起きたのか理解できなかった
振り下ろされたナイフに刺されるはずだった
しかし、痛みは無い
変わりにあるのは圧迫感と、温もり。
カハッ
マリーローズは耳元で聞こえた音に恐る恐る視線を向ける
少年だった
床に打ち付けられたようになっていた手を動かそうとして何か液体が触れた
暖かく、水にしてはドロリとしているように感じるそれはマリーローズの手を完全に濡らすまで時間はかからない
何が起きたの?
手に触れているのは何?
見たらダメな気がする
でも、気になってしまう
でも、でも、でも…
マリーローズが震える手を持ち上げ視界に入れる
そこには真っ赤になった自分の手があった
頭の中が一気に整理されていき、直前の出来事が鮮明になっていった
振り下ろされたナイフがマリーローズに届くよりも早く、少年はマリーローズに覆いかぶさるようにして身代わりになった
「ッ!ッ!ッ!」
声が出来るのであれば上がったマリーローズの動揺する短い悲鳴は浅く荒い呼吸になる
耳元に聞こえる少年の荒い息遣いだけが時間が止まっていないことをマリーローズに教える
「ガキも哀れだな!嬢チャンの命より金が大事だってお偉さんが判断しなきゃ痛い目見ずにすんだのにな!」
マリーローズの脳裏に優しく笑っている両親が浮かんだ
そして、砕けた
次に従兄弟や叔父である国王らが浮かぶが同じように砕ける
マリーローズの呼吸がドンドン浅く、早くなる
カハッ!ゴフッ…
咳込む少年を見る
再び天を見れば血に濡れた手
反対も持ち上げれば同じようになっていた
「恨むぜ~ガキも!俺も!民衆全員でだ!」
「その薄汚い口は耳障りです。黙りなさい」
ぺレインは男の頭を床にたたき付けた
もっと早くこうしておけばよかったと、ただ思う
自分に対しての恨み言かと思えばそうでもない
第一、何を根拠に怨むと言っているのかが理解できない
少し遡るが、ぺレインに気がついた男は罵声を上げながらナイフを少年から引き抜いてぺレインと対峙した
ぺレインと男では男の方が圧倒的にマリーローズに近いのでぺレインは飛びかかる準備はしつつも男の隙を伺う
鼻を鳴らしたがマリーローズの血の臭いは無い
この部屋にある血の臭いの種類は一つだけ
上手くマリーローズをかばってくれた少年に心の中で感謝を送りながら、早く医者に見せてやりたいとも思いながら、マリーローズに最も被害が行かない方法を見つけた
マリーローズは自分のよく知る狼の獣人であるぺレインがそこにいることに気がついていなかった
ただ、男の言葉は的確だった
少年が傷付いている、自分をかばって
その事実にマリーローズが気がついた瞬間に恨むと言われた
マリーローズの脳裏に屋敷にいる使用人達が浮かぶが、直ぐに闇にのまれていった
城下町に暮らす人々も同じように現れては闇に消えていく
「~~~~ッ!!!!~~~~ッ!!!!~~~~ッ!!!!!!」
マリーローズは堪らず悲鳴を上げたが、大きく息をはいているだけにかわる
違いがあるとすればマリーローズの瞳が大きく開かれ嘘だと、いやだと、ヤメテと、瞳でも叫んでいたことだろう
そして、最後に少年が浮かんだ
見たことの無い色の髪と瞳を持った少年は印象的だった
その少年も闇にとけていく
「うらまねー、よ」
少年はかすれる声を絞り出す
同時にマリーローズの脳裏に浮かんだ少年の姿も闇から放れる
大損だ
こんな怪我までして、俺らしくない
……
違うな
俺が望んだことだ
十分俺らしいだろ
だからさ、そんな辛そうにすんなって
顔あげれないから、どんな顔してるかわからねーよ
でも、お前なら泣いてくれてるんじゃね?
こんな俺のために、
俺、盗っとだぜ?
それでもお前なら、そうなんだろ?
だから俺もお前に言えるだけ伝えたい
沢山思ったんだぜ、生まれてはじめて、お前だけに願ってるんだ
お前が俺にくれたから
言葉とか難しいな、
なあ、辛いとか悲しいとかさ「全部、見んな。」お前は綺麗なところだけ見てろよ。汚いのは「蓋して感じるな。」二度とか言うから俺が失敗したんだ。最初から間違えちゃいけなかった。そうだろ?だから、俺強くなる。お前を当たり前に「お前の心も」身体も全部守るようになる。汚いのは「全部」俺が引き受けるから、あの日俺がお前に心も生もくれたから、大事に「もってく」。それで俺はもう十分だからさ。「マリーローズ」お嬢様、貴女に「永遠」の忠誠を、永久「に」捧げる。だから「綺麗でい」てくれ、あの日と同じに、俺を見てくれたままで、俺がお前を、マリー「ロ」ーズお嬢様を守れるようになるまで、本当に守れるようになるから待っててくれ
ぺレインが男が気絶したのを確認してドアの前にあった椅子を退かしてから少年とマリーローズの側に行く
二人とも気を飛ばしてしまっている
少々悠長に構えてしまったが、少年は重症である
このままではマリーローズの命の恩人である少年を死なせてしまうと判断したぺレインは二人を左右の胸に抱くようにして城を目指した
簡単なチェックだがマリーローズの手首に縛られた痣があるがそれ以上の傷は無い
兵士に任せるという選択肢も勿論あったが、少年を連れてマリーローズを連れて返らねば理由は納得しても不満顔をする主達の様子は造作もなく浮かぶ
なので、最善として、二人を運び、族は兵に任せた
ぺレインは純粋な戦士格ではない
万能格といわれるタイプで器用貧乏とも仲間内では揶揄されるが、逆を言えば獣人の平均クラス、もしくはそれ以上なのだ
そのため、下手に騎馬で進むよりも早く、小回りも利くし臨機応変に対応も可能。
結果、ぺレインは兵達が数時間かけて帰るだろう道を一時間もかけずに城にたどり着いた
城に着くなり医者をと叫ぶぺレインに待っていた大公マグノリアルを初めとする王族は焦りを覚え、一次収集がつかなくなりかけたが、ぺレインを初め、王妃と王太子妃、宰相が一喝し、マリーローズを庇った少年の治療が直ぐに始まった
法術で止血、医療で傷を塞いで、また法術で増血して自然治癒力を上げておく
宮廷法術師オビール・ゲンの鮮やかな手つきに、医師が心を折りそうになったのは別の話
医師の話では翌日には目を覚ますと言われた少年は、朝には消えていた
医師の言う通りに朝に目を覚ましたマリーローズは言葉が喋れないだけでなく、その愛らしく、天使と謡われた笑顔を完全に消してしまっていた
宮廷法術師オビール・ゲンが少年の捜索、及びマリーローズの様子を見たが、少年が見つかることも、マリーローズが笑うことも無かった
読んでくださり感謝です
本当にありがとうございますヽ(゜∀゜ヽ 三 ノ゜∀゜)ノ