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精霊と

ヴァイスは覚悟を決めた

惚れた相手にそこまで言われて黙っていては男が廃るというもの

抱きしめるという行為だけは理性で抑え、それでもらしい形で決意を告げるとマリーローズはヴァイスに抱き着いた

目を白黒させつつその体を受け入れようと両手をマリーローズの背に回した瞬間だった


『お話はお済みですか?』


水精霊の声が頭に響いた

ヴァイスがマリーローズの背に手をやる直前

マリーローズは驚いたようにヴァイスの頭部にしがみつく


いや、流石にそれは息、出来ネェカラァ~


マリーローズの腕の付け根がヴァイスの口と鼻を抑える

驚いて咄嗟にしがみついたのは理解できたが、流石に口や鼻を抑えられて息をできるはずもない


しかし、ヴァイスに無散していた理性が戻るには十分だった

一言でいえば、危なかった

だが、欲を言えばもう少し許されたかった


邪魔された身としては後者の方が強いが、今は自分でも受け入れきれなかった事をマリーローズが受け入れてくれた事を喜び、満足するべきだと思考を整える

とりあえず、

溜息すら吐き出せないのでマリーローズの服を引っ張り僅かに体を離させると漸く出来た隙間から新鮮な空気を体に取り込み、マリーローズに声の正体を教えることにした


「安心しロ。ありゃ精霊ダ。敵ジャネェよ」


マリーローズが〈せい、れい?〉と小さく口を動かす

ヴァイスはマリーローズが自分の膝に腰を降ろしたことを感じてマリーローズの涙を拭いながら出来るだけ優しく言う

精霊とマリーローズは初対面、出来るだけいい印象を持たせたい

ヴァイスからしたらマリーローズに悪印象を持つところなどないが、それは受け捕り手の主観なので自分を基準にはしない


「俺も始めて見たケドォ本物ッポイんじゃネェの?あのお伽話の中にしかいなかった存在にお目にかかれるナンザ滅多にネェからヨ。挨拶しなくていいノカ?友達になれっかもヨ?」

〈友達?…そうね、挨拶してみるわ〉


マリーローズはそういうとヴァイスから離れ立ち上がりカーテシーをしてニッコリと微笑む

話すことが出来ないマリーローズの挨拶はこれしかない


「あ~コイツ話せネェンダ。マリーローズ、マリーローズ・ウ・ダルサスーン。ベイクード王国の大公令嬢。人間のイイトコのオジョウサマって奴ナ」


『始めまして、人間のお嬢さん。』

「人の話聞いてたカ?」

『えぇ、ですが、人の身分など我等には関係ありませんので』

「ッタク」


マリーローズは頭に響く声が精霊の声と気がつく


〈ヴァイス、私は気にしないわ。お話にしか聞いたことがない精霊様にお会い出来たんだもの。人知を超える力を持つ精霊様の方が上位よ?当たり前だわ〉


しかめっ面になっているヴァイスにマリーローズは苦笑混じりに言う


マリーローズは幼い頃に聞いた話しを思い出す

精霊が出てくる話は珍しくない

寝る前によく母親が読んでくれていた


その中でもマリーローズは好きな話しを思い出していた

ヴァイスに会う前に好きだったはなしを


植物の精霊に愛された娘の話

右の親指に祝福を受け、それが触れた場所からはたくさんの植物が生まれた

娘はその力を持って戦争を止める

だが、周りはそれを受け入れてくれなかった

娘はその力を唯一喜んでくれた祖母と姿を消すがその先で力を与えた精霊に愛され平和に大好きな花々に囲まれて暮らすという話


いいことをしたのに褒めてもらえない娘は気の毒で最初は泣いた

だが、忘れられず、何度も話をしてもらった

良いことと悪いことは人によって違うと幼いなりにそこで学んだ

娘が何故褒められなかったか、それは父親っが武器商人だったからだ

戦争が無ければ事業が潰れ、家族全員が路頭に迷う

これは褒められたことはない

所詮子供の浅知恵だった


娘は出荷される武器全てに触れた

銃が打たれれば、鉄の弾の代わりに花が吐き出され

大砲も同じように撃たれればたくさんの花びらが空を舞った

剣を抜けば花束になっていた


この話では敵側は呆気にとられていたが、もし、好機と攻められれば多くの人が亡くなった


気がつくと色々学べた


何より、最後は大好きな花に囲まれ、自分を愛する者に囲まれて暮らす娘は幸せなのだ

一番主人公が幸せになれる場所にいるのだからそれが一番である

そして、精霊の事を娘も愛していた


マリーローズの両親である大公夫妻は相思相愛と言っていい程仲が良い


だから、愛するもの同士が側にいる結果がうれしかったし、いつか自分もと憧れた結果だった



マリーローズは話を思い出してハッとした

今までただ、話という物を受け入れてきていた

だが、今、思い出したときに確かに変化していることが一つ

最後の精霊と娘が幸せでいる場面を思い出すとき、一つだけ違った

ハッキリと自分を娘の立ち位置を自分で想像した

そして、精霊の場所にいたのはヴァイスだった

いつもは見たことがある挿絵だけ

でも今回は自分が主人公になり、ヴァイスも出てきた

そして、二人の関係はお互いを愛し合う恋人


ヴァイス、気がつかない振りしようと思ったけどダメみたい

私のわがままってことにしたかったのに

初めての友人の貴方に対しての独占欲と思っていたかったのに

心には嘘がつけないみたいだわ同じ気持ちだと信じたいけど、でも、貴方が大変な目に合うかもしれないって知ってるから、これ以上は言えないわ

ヴァイス、愛してる、大好き、ヴァイス

そして、ゴメンナサイ、ヴァイス


「ンデ、オメェは何考えてんだ?」


いつの間にか落ち込んで顔を下げてしまっていたマリーローズの頭部をガシッとヴァイスは掴んで尋ねる

痛くはないが驚いてマリーローズは慌てて顔をあげる


「ロクでもネェ事考えてやがったナ。しょうがネェナァ」


マリーローズの頭をワシワシと撫でながらヴァイスは笑みを浮かべていう

マリーローズはそんなヴァイスに見とれ赤面する

自覚したばかりの気持ち

胸が大きく跳ね上がる


「もっかい説明すんゾ、こいつら精霊の仲間を俺がいつの間にか知らずに助けてたらしいンダワ、ンデ、お礼になんかしてくれるツウカラオマエの護衛を頼んダ」

〈護衛…ってえぇぇぇぇぇぇぇぇ〉


マリーローズは思わず悲鳴をあげた

声は無かったが

ただ一つ確かなことはあまりの急展開に着いていけず自覚したばかりの恋心に振り回されることは終わった


読んでくださり、ありがとうございます

次回は11/21に投稿予定です


この二人早く進展してほしいです(←オイ)


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