【契約』
《過去 魔王メイト討伐後》
「契約?」
『そう、契約よ』
「あれ?聞こえる様になってる」
『!……なーるほど』
鏡の中の『俺』は何かに気付いたと同時に唇に指を当ててあざといポーズをいちいちとってくる……うざいな。
『自分の事をうざいなって酷いな〜♪』
うるさい、それで、契約って?
明らかにお前から言ってくる契約なんてヤバいんだろうが……
『キャハッ♪ヤバくないわよ?契約は単純で簡単♪』
「……」
『私を受け入れなさい』
「……は?」
『ね、“契約”でしょ?私を身体の一部、心の一部として受け入れなさい』
何を言ってるんだ?コイツは?
まるで訳がわからない。
『えぇ、今アナタが私に抱いてる感情は複雑ね……まぁ無理もないよね〜……でもこうなる事も解ってたでしょ?』
「……」
『だよね♪そろそろ隠さなくていいわよ?普通の人なら頭がパンクするだろうけど、【私】には元々の知識があるよね♪』
「……」
『そう、アナタの世界の“アニメや漫画”の知識よ』
そうだ……異世界、魔法、女神__そして魔王。
元を辿れば全て元の世界で“見ていた”……いや、正確には同じようなシチュエーションって事だが……
『そして私もアナタの記憶を通して見ている』
「だけど、実際に使うのや見るのじゃ全然違う」
『でも知識としてあるから色んなことが想像できる、でしょ?アオイちゃん風に言うと……「先輩方!知識ありがとうございます!」ってとこかな?』
ムカつく……
『うーん、今は感情を食べないであげてるんだけど、そんなに怒られたら話しあいも何もないにゃぁ……』
怒るのは当たり前だ、どんな事情があっただろうとしてもお前がヒロスケを殺したには変わりない!
『はぁ……アオイちゃん……と言うか【私】ってこんなに聞き分けなかったのかなぁ』
「俺の中に居たのなら理解しているだろどう!」
『そうね、【私】はその後、怒るのでもストレスを感じる訳でもなく、心を無くした……あの時は私も焦ったわよ〜……それこそヒロスケちゃんを殺した時の力をエコして__』
「っ!」
俺は無駄だと解っていても鏡に向かって思い切り拳を叩き込んだ。
『……デリカシーが無かったわねごめんね?♪』
「……」
『未来の話をしましょう』
「!?」
なんだ!?急に目の前が____
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『これは本来の【神】が定めた未来』
「……!?」
俺はボロボロになり血を流しながら1人の男にクナイを突き刺していた。
「…………ネバー……さん……」
男はその一言を言って灰になり消えていく。
「……姉さん!」
「!?、ヒロ!?」
どうなってる!?俺は……あれ?
「……?、どうしたの?」
「い、いや、何でもない」
そうだ……俺はみんなで力を合わせて魔神を倒した。
「他の人は!」
「……解らない……」
折れた日本刀を握りしめヒロユキは悔しそうだ。
「そっか……」
「……でもやったんだ、俺達」
「うん……でも何だろ?この感覚」
全ての元凶を倒したと言うのにモヤモヤするこの感覚……
「さっすが勇者ね、気付くなんて』
「え?」
「……姉さん?」
「今のって……」
俺が……言った?
『ご名答♪』
「っ!?」
が、ぁぁぁぁあ!!頭が!頭が割れる!
『キャハハハハハ!』
頭が割れるように痛く苦しいのに俺は笑っている。
「……お前……誰だ!」
『へぇ?♪すぐに中が変わった事に気付くんだ?流石、魔王メイトと1人で戦っただけの事はあるわね。』
「……っ!」
俺の身体はもはや言う事を聞かない。
『当たり前でしょ?物語は魔神を倒して終わり。次のページからは神はもういないのよ。』
「……姉さんから出ていけ!」
ヒロユキが俺を戦闘不能にしようとしたのか手に持っていた刃物ではなく、殴りかかってきた。
だめだ!そんなんじゃ『私』は!
『キャハッ♪考えが甘すぎて胃もたれしちゃう〜♡』
予想通りヒロユキの攻撃は軽く弾かれ……!?やめろ!
「……っ」
『さようなら♡』
うわぁぁあああああああ!ヒロユキ!ヒロユキ!!!!
「……」
『あら〜、思ったよりこのクナイ斬れるのね?首の半分がスラッと斬れちゃった♪』
「……が……ぅ」
『あの世に行く前に教えてあげる……アナタ達【主人公】はね、神を楽しませる為の駒でしかないの、だから目的を果たせば『私』から世界ごとお掃除される運命なのよ。』
「…………」
『最後まで、聞き取れて逝ったかな?ま、どっちでもいいけど♪』
どう言う事だ!神?掃除?何を言ってる!
『ぎゃーぎゃーと頭の中でうるさいわねぇ〜時期にアナタの魂も溶けて無くなるんだから後はこの世界が崩壊するのを見ときなさい?もう手遅れ、お疲れ様でした☆』
待て!やめろ!
『さようなら。』
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「!?……今のは……うぷ」
悪夢を見ていたのを無理やり起こされ、吐き気を催したが何とか吐かずに止まる。
『あれが、未来よ』
未来?ならやっぱり__
『いいえ、だから言ったでしょ?あれは私じゃないのよ』
「……なら、アイツの言ってる事は?」
『本当の事よ』
「……」
『これがアナタ達の行き着く先、全ての魔王を倒し、魔神を倒してハッピーエンド。……その後は神の目から離れ世界の続きは無くなりお母様……ピリオドによって誰も見られず終焉を迎えるわ』
…………………待てよ?じゃぁ、お前は何者なんだ?
『……』
あの未来の俺の中に入っていた女神がお前じゃないならお前は何なんだ?
『てへ……実は私も私が解らないの』
は?
『さっきも言った通り『女神』としてシナリオに組み込まれた行動をしたけど、その後の【私】は想像以上に『私』に力をくれた、だから『私』は色々なことを知ることが出来て世界に干渉する事が出来た』
「……」
『自我が芽生えた私は【私】の中に居て見ていたわ』
「それで?」
『答えが出たの……『私』は【私】だって』
「……」
『……』
初めて、真剣な目で見られたな。
『契約してくれないと泣いちゃう!』
「契約は……する」
『ふぁー!!やった!やった!』
ピョンピョンと鏡の中ではねて喜ぶ『俺』……その度に胸がボヨンボヨンと揺れている。
「出来れば恥ずかしいからやめてほしいな……」
『私を受け入れるって事はこう言う性格にもなっちゃうって事よ♪』
「うげ、まじかよ……やっぱやめようかな……」
『断りまーす♪』
その後、俺は契約して【僕』になり、完全な状態になった後、ピリオドにバレないよう記憶を消して『僕』に全てを託した。
全ての準備が終わる、来る日の為に____





