『アナタには全て狂わされたわ、とりあえず死になさい』
「来なさい偽者ども」
『__』
最初に動き出したのは『リュウト』
凄まじい速さで踏み込み、レイピアで心臓を貫こうと迫る――
「甘いですよ!」
ユキは紙一重でかわし、そのままレイピアを握る腕を双剣で斬り落とした。
『__!』
『__!』
「ヒロユキさんも!」
いつの間にか背後から迫っていた『ヒロユキ』の黒刀を、ユキはもう片方の剣で受け止める。
「燃えろッ!」
『__!!』
剣を伝って蒼炎が黒刀へ走り、刀身を包み込む。
ヒロユキは即座に刀を放し、炎から逃れるように後方へ跳んだ。
「逃がしません!」
ユキは片腕を斬られたままのリュウトを掴み上げ、そのままヒロユキに向かって豪快に投げつける。
『__!?』
投げ飛ばされたリュウトはヒロユキに直撃し、2人まとめて壁に激突した。
「どれだけの覚悟で私がここまで来たと思っているんですか……今の私は、中途半端な勇者2人程度では止まりません!」
『__』
『__』
リュウトの失った腕からは血の代わりにピンクのスライムがうねり出て、瞬く間に再生。
ヒロユキの黒刀もまた、スライムが再び形を取り戻していく。
「やはり……サキュバスは蒸発させるしかないようですね」
ユキの足元がジュウ、と音を立て、白く変色していく。
彼女の炎は、もはや灼熱を超え“焼滅”の域に達していた。
「今度はこちらから行きます!」
ユキは双剣をクロスさせ、蒼炎を纏ったまま踏み込み__ヒロユキの胸を斬り裂いた。
『____!!!』
黒刀ごと胸から四つに分断されたヒロユキ。
「燃えろ!」
そう唱えると四つの肉片は一瞬にして蒸発した。
『____』
「アナタも!」
そのままリュウトへ斬りかかろうとした瞬間――
「……ッ!?」
横から“巨大なハンマー”がユキの身体を叩き飛ばした。
「っ!!」
宙を舞いながらも、ユキは必死に体勢を立て直し、床へくるりと着地する。
「……出来れば、この未来は避けたかったんですけどね……」
ダメージは浅い。だが、ユキにとって“この状況そのもの”が最悪の未来だった。
『__』
『__』
『__』
『__』
『__』
リュウト。アカネ。あーたん。みや。アンナ。
――リュウトのパーティーメンバー全員が、虚ろな眼で彼女の前に立ち塞がっていた。
「…………どうしましょうかね」





