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異世界転生したら女になっていました!  作者: しぇいく
最終章

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615/644

封印された都

 《スコーピオル》


 ________


 ____


 __


 「……」


 空気が変わったのを感じて、ゆっくりと瞼を開く。


 「……静かですね」


 本来なら、吸血鬼族たちが忙しなく動き回る都市。

 けれど今は気配すらなく、ただ霧が辺りを覆っていた。


 「それに……あの太陽……魔法ですかね」


 空に浮かぶのは、近く、そして小さな“偽りの太陽”。

 都市全体を淡く照らし続けている。


 「……お母さん」


 ユキは腕に抱いたアオイの顔を見下ろす。

 まだ目を閉じたまま__それでも、その姿はいつものように美しく、可憐で。


 「やっと、ここまで来たよ」


 彼女は歩き出す。

 静けさの中、ぽつりぽつりと語りかけるように。


 「覚えてますか? 初めて会った時のこと」


 当然、返事はない。


 「じぃじが“お母さん”って言った時……私、本当は知ってたんです。本当のお母さんじゃないって」


 幼い頃の記憶__本当の母の顔。


 アオイと会う前のはそれだけが支えで、同時に心をえぐり続けてきた。


 「私は、いつも泣いていました……どうして母は私を捨てたんだろうって」


 毛布の中で声を殺して泣いた夜を、ユキは何度も繰り返した。


 「じぃじは気付いていたんでしょうね……だからあの時“おかぁさん”を連れて来てくれた」


 孤独と涙の毎日の中で――アオイと出会った。


 「あの時、アナタも困ったでしょう……でも、アナタは言ってくれた」


 


 「……“ただいま”って」





 堰を切ったように、涙が溢れた。


 「それからの毎日が楽しかった……アナタの知ってる私とは違うでしょうけど……私にとっては、アナタがかけがえのない“おかぁさん”なんです」


 「……おかぁさん……おかぁさん……」


 もう声にならない。

 ユキは泣きながら歩き続け__


 「……大好きです。ありがとう。おかぁさん」


 心の底からの感謝を捧げ、涙をぬぐって__また歩き出す。



 そして____



 「ここが……“アレ”のある場所」




 スコーピオルの中心。


 元魔王城へ辿り着いた。


 

 

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