『居なくても邪魔をするのね』
「グラン様」
「……あなたは?」
アイとマクリの激しい戦いの中、服についた埃をパタパタと払いつつ、ミカがグランの前に現れた。
「私の名はミカ。ミクラルで産まれ、グリード育ち……グリード城の魔法研究員をしていました」
「何故ここに?そしてあの方は?」
「まずは国王にこれを__」
取り出したのはピンクの液体が入った小瓶。
「これは?」
「神の島に実る果実を特殊調理したものです。国王ならすぐに理解するはずです」
「……」
グランはそれを受け取り、意識を保つのに精一杯なアレン国王に飲ませる。
「……これは!」
味を知っていたのかすぐに国王はそれを飲み干すとみるみるうちに顔色が良くなった。
「あ、あなた?」
「心配かけたな……もうしばらくは大丈夫だ」
グランは思わずアレンを抱きしめた。
「良かった……もう死ぬのかと……」
「しかし、どうしてこれを……」
「あの子が持って来ました」
そういって国王はミカを見る。
「どうも【神の使徒】の国王様。とりあえず回復したならここから離れましょう」
アイとマクリの戦いは次第に規模を増し、周囲を巻き込む勢いだった。アレン国王たちも同意し、移動を開始する。
なお、動ける状態ではないタソガレとナオミは筋力強化魔法をしたミカが軽々と抱え上げ、投げるように運んでいった。
「そして、どういう状況だ?あの2人は?」
尚も激しい戦いを繰り広げている2人、どちらも鏡のように同じ攻撃を出し合っている。
「あの人類殲滅をしようとしてるムキムキの人は六英雄の【鬼神マクリ】」
「六英雄!?どうして我々を……」
「彼もまた『獣人』だからです」
「……『ピリオド』」
「はい、そしてもう1人は__」
説明しようとしたがミカは少し黙る。
「?」
「彼女の過去は語らない、だが一つ言えるのは“この場で唯一『獣人』であるのに『ピリオド』の支配が効いていない”特別な存在だ」
そしてミカは言葉を続けた。
「__“勇者が来ない選択をした分”彼女に人類の運命はかかっている」





