『孫も殺しちゃいなさい』
「おじいさま……」
『ホッホッホ、お前がここに来るとはな』
目の下に隈を作って髪もボサボサなアイは目の前の状況に困惑する。
「どうやら、間に合ったみたいだね」
「お前は!?」
アイの後ろから現れたのは白衣を着ているミカだ。
「やぁ、僕からの手紙はどうだった?」
「この手紙の主、お前か……」
「そう、君が知りたい答えを彼は知っている」
ミカがそう言ってマクリを指差す。
その背後には全てを出し尽くして気を失っている代表騎士2人と結界の維持に手一杯になっているアレン国王と立ち尽くしこちらを見ているグランがいた。
「…………」
ゆっくりと服__装備を整えながらマクリに近づいてゆくアイ。
『おー……我が孫よ、お前も手伝ってくれるか?』
「手伝う?」
『こやつらは悪じゃ、殲滅して置かないと大変なことになるぞ』
「……」
もう一度アイは周りを見て目を閉じ。
ゆっくりと口を開いた。
「お爺さま……悪とは何でしょう」
そして、目を開ける。
真っ直ぐと……マクリの赤い目を見る。
『何を言い出すかと思えば……悪とは、己の道を邪魔する奴だ』
「……え?」
『自分の決めた事に道を敷き、そこに邪魔な物があれば退ける、当然のことだろう』
「な、ならば、今のお爺さまはどこへ向かっているのですか!」
『決まっておる、人類の殲滅だ』
「どうして!」
『どうして?ふむ、たしかに、なぜ儂はこんな事を決めてしておるのだろうな?』
マクリは頭をぽりぽりとかきながら話す。
「……は?」
『どうしてか思い出せぬが、そうしなければならないと儂の心が言っておる』
ちぐはぐな会話にアイは違和感を覚えるが続ける。
「では、人類を殲滅した後、どうするのですか?」
『さぁ?だが、悪は殲滅しなければならん!』
アイはマクリが『呪い』にかけられている事に勘づいたが昔の自分を重ね合わせる。
今までの自分と呪いは何が違うのだろうか。
自分で正義を決めつけ、行動する自分____
「私と戦う時のアオイもこんな気持ちだったのかな……」
『?』
ボソッと呟いた後、構える。
「お爺さま、私はアナタの正義を否定する!」
『ほう?儂に仇なすと言うのか?貴様の父の様に』
「そうです」
思い出すのはあの日、アオイ達との勝負に負け、気がついたらアバレー王国の牢屋の中……何もかも失って後は死ぬだけを待つ自分。
「だけど、まだ死ねない……私は生きている限り探究し続ける!何が正義で……何が悪かを!」
ドゴーン!と音と共に地震が起きる。
マクリが地面を思い切り踏んで威嚇したのだ。
『まだまだ甘っちょろいひよっこが……』
「っ……!」
恐怖を振り払う様にアイは同じように踏み込み地震を起こした。
そして____
『フンッ!』
「はぁぁぁあ!」
マクリvsアイの戦いが始まった。