『え〜どうしてこの子が?』
「はぁ……はぁ……」
目が霞む……
『儂の【魂抜き】をくらってこの短時間で覚醒するとは……少し見くびってたようだ』
何を言ってるか……解らない……身体が重い……
「おぇ……」
吐いてしまった……
『魔力酔いか?どうやら、自分の丈にあっていない様だな____“その盾は”』
「た……て?……」
気がつくと私はいつの間にか黄金に輝く盾を持っていた。
「ガラァァァアァァァア!」
『ほう、此方も頑丈だな』
「ナ、オミ……」
遠くでナオミが戦ってくれている。
加勢しないと……
「う、ぐ……」
一歩、一歩、歩くが動くと精神が持っていかれる。
「も、う、だ……」
「いえ。まだ行けます」
意識を手放して倒れようとした時、グラン様が私を支えてくれた。
気付かなかったが、私の手足に魔皮紙がはってある。
治療してくれていたのか……
「グ、ランさま……」
「ごめんなさい、先ほどから私も微力ながらにナオミやアナタの援護としてシールドを展開しているのですが、ことごとく破壊されて……こんな事しか出来ません」
「い、え……危ないので下がっていてください」
「アナタ、さっき誰かと話してませんでした?」
「……え?」
私が?
「はい、意識がないはずですけど、何か話してる様でした」
「なんと……言ってましたか?」
次の言葉で全てを私は思い出した。
「確か、“キール様”と」
「あ……」
そうだ、キール様の最後の命令。
「そうだ……私は……耐える!」
持っている盾に力を入れる。
『ふんぬ!』
「ガァァァァァア!」
「ぐ……」
ナオミに攻撃が入るたびに意識が飛びそうになる。
耐えてどうなる?
ナオミが無敵になっていてもマクリに決定的なダメージは与えられていない。
それどころか
『そろそろ鬱陶しくなったわい』
「ぐっ!」
此方にきたマクリの攻撃を盾で受けるが弾き飛ばされる。
「か、は……」
と、飛ぶ……意識が……
『お前は後じゃ』
「っ……」
グランは蛇に睨まれたカエルの様に動けない。
「ガァァァァァア!」
『お前もしつこい!』
ナオミは獣の様にマクリに飛びつき食い下がる。
耐えて何になる。
何がある。
こんな想いをいつもしていたのか、あの人は……こんな、精神が狂いそうで心が折れそうな……
「違う、私は!」
『摩訶不思議な魔法を使いやがって!』
「ぐが!?」
「ぐっ!」
しがみついてるナオミの巨体を此方に投げつけてきて一緒に飛ばされる。
「はぁ……はぁ」
『まだ終わりじゃないぞ!』
「っ!」
『もう手加減はせん!2人まとめて死ね!』
猛攻……、一撃一撃が重く、私の残り少ない魔力……いや、生命を削られている……
「が、ぁぁ!」
『黙れ!』
ナオミもダメージを受けてはいないがナオミスペシャルの限界が来て動きが鈍くなる。
「もぅ……だ、め……」
諦めかけたその時____
「…………」
「……」
マクリからの猛攻が止まった。
『ほう……これはまた……』
マクリの視線の先を見ると____
「…………お爺さ……ま?」
かつてのアオイの敵__
__獣人のアイの姿があった。