『______』
《そして現在》
「……状況は?」
心臓を貫かれたピリオドの身体は倒れたまま動かなくなっている。
「あーおい、おせぇよ」
「……すまない」
「えー!ミー達は最高のタイミングで出てきたのにー!コイツが謝ることないよアニキ!」
しれっと影から出てきたジュンパクが文句を垂れながらヒロユキとトミーの元へ来た。
「……ジュンパク、何も言うな」
「う……」
いつもより強めの口調にジュンパクはたじろぐ。
「あーおい……てめー……そんなに殺気出せたのか」
「……そんな事より、状況だ」
「あーおい、わーったよ、後はコイツに聞け」
そう言って魔皮紙を取り出し起動すると__
{やぁ2人とも、初めまして}
白髪の長いツインテールで白衣を着た女の顔をしている男__ミカが出てきた。
「っ!?」
ミカが出てきた瞬間目を見開いて驚いたジュンパク。
{おっと、1人はちゃんと私の事を覚えていたみたいだ、だから訂正しよう……久しぶり、お兄ちゃん}
「…………」
そう言われてジュンパクは目を逸らす。
「……状況は?」
そんな2人のやり取りを無視するようにヒロユキが割って入った……ヒロユキは以前、ジュンパクの昔のことを聞いていたので弟が居ることは知っていたが、今は時間がないと判断したのだろう。
{…………君達が魔神討伐に【神の島】に向かった2日後にあの巨大な“何か”は現れた}
ミカも久しぶりの再会より説明を優先させ話し出す。
{ちなみにだが、君達が“アレ”……仮に巨人と名付けよう、君達が巨人に気付かなかったのはアオイ様があちらからも干渉出来ないようにしていたからだ、アオイ様に感謝するんだね}
「……感謝してる、本当に」
ミカは皮肉混じりに言ったつもりだが予想外の心の底からの返答に少し困惑した。
{あ、あれ?}
「……どうした?」
{いや、何でもない}
「……続けろ」
{…………その後、ピリオドは全人間に対して絶滅宣言をしたんだ}
「……絶滅宣言……」
{実際は私が付けた宣言名なんだが、ストレートでいいだろう?文字通り、その日から海に陸に空……全世界のありとあらゆる魔物が人間に襲いかかるようになった……それこそ1つの軍隊だ}
「……軍隊?」
{そうだよ、君は見たことあるかい?泳げない魔物が海の魔物に乗ったり足が遅い魔物を他の魔物が束になって運んだり仲良くしてる光景さ、そこに食物連鎖も何もない、ただ“人間を殲滅させる事”だけの為に世界中の魔物が協力してるんだ}
「……」
{ま、それを見越してアオイ様は先に私達に指示を出してた、だから今人間は全員ミクラル城にいるよ}
「……そうか」
それを聞いてもほとんど動じないヒロユキにいじわるな笑顔でミカは言う。
{君は勇者だろう?それを聞いて助けに行こうと思わないのかい?}
「……フッ……お前達のボスはそこまで見越しているのだろう」
{ほぅ?……なんだろうね、君からはまるで昔からアオイ様を知ってる様な立ち振る舞いを感じる}
「……否定も肯定もしない、ただ、お前達の知らないアオイさんを俺は知っている」
{……………………これからは気をつけて発言したまえ、全てが終わったら全力で君を殺しにいく可能性があるから}
「……」
{すまないね、話が脱線してしまった……今は伝説の勇者が作り出したとされる、ご存じ【結界】のおかげでミクラル城のあるナルノ町には魔物は入ってきてないが時間の問題だろう}
「……」
{このまま何も行動を起こさなかったらミクラル城の結界は壊れ、奴の勝利だろう、そしてもう一つ、悪いお知らせだ}
「……なんだ?」
{手が動き出した}
「……?」
{いや……“手”が動き出したんだ}
映像越しに指を差したその先は____
「……なるほど」
巨人が大きく片手をあげて振りかぶっている所だった。
{どうやら、やっこさん人間だけじゃなくてこの星ごと壊すつもりの様だ}
「……」
{あの手のひらは魔法を使ってスピードがアップしてる、タイムリミットは3日って所だろう}
「………そうか」
{ここからが君の選択だ}
「……」
{今から城に行って人間を救って星ごと死ぬか、星を救って人間を殺すか}
そう言ってミカはヒロユキに選択を委ねる。
きっと彼女達は彼女達なりに動いてくれるだろう、だが運命力が強い【勇者】の選択によって未来が変わる。
「……俺は__」
ヒロユキは考え、選択をした。
「……星を救う」