『ふーん』
「ヒロユキさん……」
「…………」
少し間を置いて、ユキが声をかける。
ヒロユキは涙を拭い、真っ直ぐと彼女を見据えた。
「あの……」
「……何も言わなくていい」
「はい……」
「どうすれば助けられる? 何をしたらいい?」
「フフッ……」
「……なに?」
「ヒロユキさん、気付いてます? すごく嬉しそうな顔をしてますよ」
「……フッ……否定はできない」
「フフ……いい顔です。やることですが、今までと変わりませんよ、ヒロユキさん」
「……?」
「未来は無限にあります。でも決めるのはヒロユキさん……いいえ、【勇者】であるあなた達の行動こそが、運命を定めるんです」
「……」
「【勇者】とは何か? 異世界から来た力を持つ者でも、魔王を討つ者でもない。
――世界の運命を決める者、それが【勇者】なんです!」
「…………」
「って、スケールの大きい事言っちゃいましたけど……大丈夫です。ヒロユキさんには私たちが――」
「――決めてやる」
「へ?」
「……俺の存在が、俺の選択が運命を決めるのなら……俺が定める」
「ヒ、ヒロユキさん?」
「……行くぞ、こうしてはいられない」
「ちょ、ちょっと待ってください! 話は最後まで聞いて! 運命を決めるってことは……悪い方向にだって傾くんですよ! それに今回の相手は、その“運命”に関してだけは、他とは比べものにならない強敵なんです!」
「……女神か?」
「はい。でも――“本当の敵”は、お母さんの中にいる女神じゃありません」
「……本当の敵?」
「そうです。これからヒロユキさんに全て話します」
ユキは一歩近づき、決意を込めて彼を見上げた。
「――本当の敵の正体と、私たちの仲間について」





