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異世界転生したら女になっていました!  作者: しぇいく
第九章

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終わりを打つ者。

 「______っ」


 気がつくと、俺は海岸の砂浜に倒れていた。


 「ここは……」


 空は曇り、重たい雲が空を覆う。

 薄暗い光の中で、波の音だけが規則正しく耳に届く。


 「……!」


 視線を走らせた瞬間、砂浜にうつ伏せで倒れているアオイの姿が飛び込んできた。


 「アオイ!」


 慌てて駆け寄り、抱き起こす。

 その口からはピンク色に輝くガラス玉が、唾液の糸を引きながら砂の上へと転がり落ちた。


 「アオイ! しっかりしろ!」


 顔色は死人のように蒼白で、かろうじて息をしているものの、温もりがまるで感じられない。


 ――まるで、魂の抜けた抜け殻のように。


 『まるで、じゃなくて――魂が抜けてるのよ?♪』


 !?


 背筋に冷たいものが走る。

 この声……忘れもしない。


 「……『サクラ女王』……」


 『キャハッ☆ お疲れさま〜♪ 迎えにきてあげたわよん』


 俺はピンクの玉を拾い上げ、アオイを抱きしめたまま振り返る。

 そこには、真紅のドレスを纏ったサクラ女王が、不敵に微笑み立っていた。


 「……」


 『ダッサイよねぇ〜? 自分から“アオイちゃんゲ〜ム”なんて言い出しといて、負けるとかマジでウケるんだけど! キャハハハハッ! ざまぁ! ざまぁ見ろっての!』


 『私から産まれたくせに調子に乗るからこうなるのよ! 大人しく私に帰ってくればいいものを……ホント、居なくなってくれてせいせいするわ♪ あのクズも、あの魔神も!』


 女神は腹を抱えて笑い続ける。

 ――人の不幸、失敗、そして死を。

 それを娯楽にする者が居るとするなら、コイツこそがその象徴だ。


 「狙いは……アオイの身体か?」


 『う〜ん、半分正解で半分ハズレ〜☆ だってね、その身体なんて、もう必要ないんだもの』


 女神は艶めいた笑みを浮かべながら、片手をすっと天に掲げる。

 その瞬間、空一面に広がる雲へ巨大な魔法陣が浮かび上がった。


 「な……なにを!」


 『キャハッ♪ そんなに身構えなくてもいいのに。ほんのちょっとだけ見せてあげるわ――私の“本体”を』


 「……本体?」


 魔法陣が光を放つと、円形に雲が消し飛び、空にぽっかりと黒い穴のような空間が開く。

 そこから姿を現したのは――


 「な……んだと……」


 天を覆い尽くす、果てしなく巨大な女の身体だった。

 巨大__そんな言葉では計り知れないほどの大きさ。


 『驚いた〜? バカそうなリュウト君にも分かりやすく説明してあげる♪ あれは太陽よりも大きくて、銀河系を二つまるごと覆えるくらいのサイズなのよ〜ん』


 「……は……?」


 言葉の意味は理解できる。

 だが脳が拒絶する。

 俺の認識の限界を軽々と越えた存在――それを「目にしてしまった」感覚。


 『キャハハハ♪ 可愛い顔して混乱してるわねぇ。じゃあ特別に――私の本当の名前を教えてあげる』


 女神は唇を紅く吊り上げ、宣言した。







 『私の名は【ピリオド】。

 ――全てを終わらせる神よ』











 


 

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