全てはこの為に__
――真上から閃光が落ちてくる。
『__仲間の力……ライバルの力……ね』
光速を超える矢は見事に……アオイの肩に“刺さった”
『……ったぁ』
肉が裂ける感覚に眉をしかめるアオイ。
だが、常人ならば腕ごと吹き飛ぶ衝撃にも、彼女の身体はわずかに刃を受け入れただけだった。
――人ならざる防御。
『キャハッ♪でもざーんねん、私を殺すには威力が__』
それでも。
初めて刻まれた傷、アオイは無意識に数秒、目を離してしまった。
俺は全力で、その刹那に賭ける。
【__】
『あら、いつのまに』
俺は今まで使ってこなかった転移魔法を発動しアオイの懐に飛び込み、その華奢な身体を力いっぱい抱き締めた。
『強引な男ね♡』
【……】
気づけば、肩に刺さっていたレイピアは消え、血も傷も影すら残っていない。
治癒は瞬時。やはり、この怪物には致命などない。
『それで? どうするつもり?』
闇の深淵を、二人で落ちていく。
まるで地獄に墜ちていくかのように。
【……】
『キャハッ♪ もう為す術ないもんね? 全力を出しても、結局あなたができたのは――私を抱きしめることだけ』
アオイも俺を抱きしめてきて俺の胸に耳を当てた。
『あぁ……暖かい。心臓の音が、ちゃんと聞こえる』
【……っ!】
次の瞬間。
背に鋭い痛み。
クナイが、俺の肉を深く抉っていた。
『万策尽きたのね、最後に愛しい私が殺してあげる……この心臓、止めてあげる♡』
アオイが妖しく囁いた、その瞬間。
【____】
俺は咄嗟に、その言葉を塞ぐように――唇を重ねた。
『__っ!?』
アオイの目が見開かれる。
驚きと戸惑いの混ざった吐息が、唇越しに伝わった。
【ん……く……】
『ん……ぅ……』
俺は構わず舌で彼女の唇をこじ開け、深く潜り込ませる。
そして――“口に隠していた秘密兵器”を舌先で押し込み、アオイの口内へと移した。
『な……!?』
その瞬間、彼女の瞳に理解と戦慄が走る。
_____そして_____
【神・封印】
伝説の勇者だけが使える最大魔法が唱えられた。





