みんなの力を借りる!
【これは俺が作った“神の武器”だ】
その黄金の大槌は、かつての家族……アカネが振るった武器をイメージして鍛え上げたもの。
そして、俺が背負ってきた仲間の無念を叩き込むための象徴でもある。
【お前に倒されていった仲間たちの力――その身で思い知れ!】
俺はその場で大きく構え、野球バットを振るうように全力で振り抜く。
【――《トラッキングレールガン》!】
衝撃の瞬間、黄金のハンマーから光の杭が射出され、雷をまとって音すら置き去りにし、アオイへ一直線に突き進む。
『__っ!』
杭はアオイの手に握られたレイピアに弾かれた。
だが、それも想定済み――!
【ハンマークラッシュ!】
雷鳴と共に踏み込み、俺は巨槌を叩きつけた。
『こ、わ〜い⭐︎』
だが、その攻撃すらも細いレイピアでアオイは綺麗に受け止める。
【でもな__】
“必ず貫くレイピア”と“絶対に砕くハンマー”
交わった瞬間に“矛盾”が発生し、式場の長椅子がまるで最初から無かったの様に消える。
『ふ〜ん?気付いてたんだ?“矛盾”の答えは“見ている方を消す”……それを利用して、私ごと消そうって訳?』
だが種が割れてもアオイは動じない。
つまり、その勝ち方もダメということだ、
【それで消えてくれれば楽だったのにな!】
俺は大槌を連続で振り抜き、アオイは細剣の突きで受ける。
一つずつの衝突で順番に壁も、床も、天井も……いや、空も大地も、空気も光さえも、名のあるものすべてが音もなく消滅していった。
『キャハッ♪ なにこの世界?何も見えないねぇ?』
闇に塗り潰された虚無の中。
そこで浮かび上がるのは――普段の彼女とは真逆の、赤く輝く瞳。
その目だけが、異様に鮮明に見える。
魔法で光を生もうとしても、すぐに消滅する。
だが、俺には。
【見えるさ……バッチリとな】
『ほんっとかな〜?』
暗闇のアオイの目が消え、気配も消える。
【……】
俺は目を閉じ、静かに息を吐き__次の瞬間――
【そこだ!】
横振りにした槌と、突き出した剣が闇の中で火花を散らす。
『へぇ……本当に見えてるんだ♪』
【こんな所で嘘はつかない】
マジックシーリング。
アンナが得意とした適正魔法。
その力を借り、俺にはアオイの位置がくっきりと分かっていた。
『本当に強くなったねぇ♡リュウトちゃんっ♪』
挑発めいた笑みを崩さぬまま、なお余裕を見せるアオイ。
【うおおおおお!!】
俺は勢いをつけて渾身の力で大槌を振り下ろす。
【はぁぁぁぁぁあッ!!!】
『無駄__』
アオイがレイピアで受けようとしたその瞬間。
『……っ!?』
虚無の闇を切り裂き、一筋の閃光がレイピアを弾き飛ばした!
『最初のレールガン!?』
それは――最初に撃ち放ち、彼女に受け流された黄金の杭。
ただの外れ弾ではない。杭には“みや”の力が込められていた。
アオイに弱点など存在しない。
だが今のアオイが握るのは“アオイの物ではない武器”
それを主に立ち回ればできてくる、わずかな少しの__“隙”という弱点!
だから杭は待ち続けたのだ__この時を!
『これがみんなの力ってわけね……』
【終わりだァァァア!!】
もう邪魔するものは何もない。
この一撃で――!
『残念でした♪』
次の瞬間、手応えが消える。
大槌はアオイに届くことなく、途中で“網”のようなものに囚われていた。
『知らなかった? 私も神の武器を使えるのよ』
【……ッ】
一瞬、絶望の色が胸をかすめる。
だが――違う。これこそ、俺が待っていた瞬間だ!
【まだだ!】
途中の空間でガチガチに止まった大槌を発射台の様に足場にし、自身の脚力で真上へ飛ぶ!あーたんジャンプ使わせてもらうぞ!
【来い!エス!!!!!!!!!】
『!』
空中で叫ぶ俺の手に、“漆黒の弓”が姿を現した。
そして、もう片方の手にはアオイの手から離れた俺のレイピア。
【これが俺の最後の攻撃だ!】
俺は迷いなく弓を引き絞る。
矢として番えたのは――黄金のレイピア!
空気が震える。
闇を裂く閃光が、今にも解き放たれようとしていた。
【__うおおおおおッ!!!!】
放たれた一撃は、アオイへと向かっていった!





