互角な戦い
「俺のアオイから出ていけ……女神ッ!」
『キャハッ♡遊んであげるよ⭐︎メインディッシュ!』
不意を突いたはずの一撃――だが突き刺したのは、アオイの胸でも喉でもなく。
____ただのウェディングベールだった。
【逃がすか!】
すぐに踏み込み、追撃を放つ。
『キャハッ! あーあ、私のウェディングベール取っちゃった♪ これでアナタと私を隔てていた壁は、もうなくなったわね、リュウト♪』
挑発的な笑み。
俺の突きを、彼女は両手に握ったクナイで軽やかに弾き返していく。
【黙れ! その顔で、その声で……俺の名前を呼ぶなッ!】
『ひっど〜い♪』
打ち合うたびに理解する。
――これは本物だ。正真正銘、“女神”そのもの。
【神】の力を解放してなお、互角どころか押されている……!
ならば――!
【目撃――】
『! だーめ♪』
発動の瞬間、アオイの姿が掻き消えた。
一瞬で間合いを詰められ、クナイの刃が俺の眼球を狙う。
【っ!】
――ギリギリで回避。
『うっそぉ!? 今の避けられるの!?』
【お前こそ、そんなに動けるなら最初から動いてろ!】
交錯。
黄金の閃光と、鋭い黒の刃。
全力。
全ての能力を使い、後を置き去りにするほどの斬撃を繰り出す。
『キャハハハッ♪音速超えたくらいで調子乗るなんてだっさーい♡音速斬撃が許されるのは小学生までだよね〜キャハハハ♡』
だが、それすら軽くいなしてくる女神。
【そりゃ、結構だ!!!】
俺は目の前で黄金のレイピアを迷いなくアオイヘ投げ放った。
『っ!?』
まさか手放すとは思わなかったのか、アオイは一瞬だけ驚いた顔を見せて横に避ける。
『ちょっと驚いちゃった☆』
【これは想定外の攻撃だったか?】
背後に回ったレイピアは空中で180度旋回し、音速の弾丸となってアオイの背を穿たんと迫る。
だが――。
『あ、違う違う、投げたことにびっくりしたんじゃなくて__』
【!?】
『だって……武器をプレゼントしてくれたんだもの』
アオイは軽やかに身を捻り、突き刺さる寸前でレイピアを逆に掴み取った。
【…………プレゼントだ】
『ふ〜ん、その反応……一応予想はしてたんだ?いや、試したのかな?』
【神の武器は他の奴が触れると何かしらのペナルティーがかかるが、お前には無いみたいだな】
『もちろん♪だって『神』だもん⭐︎』
彼女は手首をひと振りし、レイピアの感触を確かめるように握り直す。
『う〜ん……アオイちゃんの記憶で、ゲームのヒロインが使ってたみたいだけど……私にはちょっと合わないかな』
【なら、返してもらえるか?】
『冗談言わないで♪ 男からのプレゼントは、大事にコレクションするのが私の趣味なの』
【……だろうな。――なら!】
『!?』
【――武器召喚!】
稲妻が弾けた。
次の瞬間、俺の手に現れたのは、自分の身長の二倍はあろうかという巨躯の黄金ハンマー。
『二本目の……武器召喚……ふぅん』
アオイの瞳が、愉悦に細められる。
【さぁ……第二ラウンドだッ!】





