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異世界転生したら女になっていました!  作者: しぇいく
第九章

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『ルカ』

 一瞬の出来事だった。

 ルコサが危機判断し転移魔法を発動させた瞬間。

 ほぼ同時にクロエの腕に見えないほどのスピードでクリスタルブレードが飛んできたのだ。


 「く、そ……てめぇ……」


 無くなった腕に魔皮紙を押し当てながら、なおも鋭い視線を敵に突き刺した。


 『キャハッ♪ なのじゃ♪』


 「まだ……そんな力を隠してやがったか」


 先程までの両腕も再生し、ルカの全身は神性すら感じさせる“クリスタルの鎧”へと変貌していた。


 『あぁ……頭の中が気持ちいいのじゃ』


 「いいね……そう言うのを待ってたんだよ!くそが!!」


 クロエは踏み込み片腕で大鎌を振る。


 『遅いのじゃ』


 「ぐっ――!?」


 刃が届くよりも前に、クロエの身体は“何か”叩き飛ばされていた。

 風圧か、衝撃波か――何にやられたのかすら分からない。


 「な、何が起きた!?」


 『何って?蹴り飛ばしただけなのじゃよ?』


 「な!?」


 ルカは狂気に濡れた笑顔を浮かべ、甲高い声で嗤う。


 『キャハッ、キャハハハハ!』


 「クロ!」

 「ルコさん!」


 異変を察したルコサが転移で戻ってくる。


 「どうなってんだよ、ありゃ……!」


 「……あれは『女神』の魔力を取り込んだんだ」


 「魔力を……?」


 「そう、つまり__あれも『女神』だ」


 『行くのじゃ!』


 クリスタルに強化されたブレードが煌めき、ルカは一瞬でルコサへ肉薄する。


 「っ!」


 ルコサは転移魔法でその刃を避ける――だが。


 『ここなのじゃ!』


 「な……!? 転移先に――っ!」


 次の瞬間、ルコサの視界に飛び込んできたのは、突き出される刃だった。


 「ガッ……ハッ!」


 両手のクリスタルブレードがルコサの胸を深々と貫く。


 『キャハハのハ〜なのじゃ♪』


 刃を一気に外へ引き抜くと、ルコサの身体は胸から上と下に分かれて崩れ落ちた。


 「てめーも死ね!」


 仲間の死を嘆くこともなく、クロエはその隙を突いてルカの背へ鎌を突き刺す!


 『うにゃっ!?』


 「終わりだぁ! おらぁ!」


 鎌を引き抜き、真っ二つにしようとした瞬間――


 「……なっ!? なんで動かねぇ!?」


 『〜♪』


 ルカは腹から突き出ている鎌を手で押さえ、その場に立ち続けていた。


 『お主たちが言ってたであろう?“核”を狙わなければワシは死なんと』


 「っ……!?」


 クロエは思わず鎌を放し、距離をとる。


 『どうしたのじゃ? これがお前の求めていた“圧倒的な力”なのじゃ。もっと笑顔になって、私と戦うのじゃ――キャハッ♪』


 刺さっていた鎌を抜き取り、まるで木の枝のようにポキポキと折り捨てながら、ゆっくりと歩み寄る。


 「……ちっ、何言ってんだ……解ってねぇのか? お前、今……『私』って言ったぞ」


 『…………』


 その瞬間、空気が一変した。


 『d/t.azAsAqdpjhaw』

 (――中身が違うって気づいたのね)


 「あ? 何言って____っ!?」


 いつのまにかクロエは首を掴まれ宙吊りにされる。


 「あ……がっ……!」


 『k(A(jawGG/ayagktx’gemaqkha#haw”v/fy』

 (私は女神ルカ、今この場においては誰よりも強い存在よ)


 「ぐ……っ……!」


 クロエは必死に足で顔面を蹴り、絡みついて抵抗する。しかし、ルカは微動だにせず、その手の力をさらに強めた。


 『dt/jwaqjeg.ajhaw”ia’dgEg(G_p&ghjahG』(さようなら、神の使徒。この力を使わせた時点で――お前たちの勝ちだ)


 「ぁ……っ……」


 最後にクロエは、ただの少女のように涙を零し、目を開いたまま絶命した。


 『……』


 ルカは死体を無造作に放り捨てる。


 『dg.@gm』

 (さて、後は――)


 振り返ったその瞬間____


 『!?』


 一本の魔勿う(まがう)槍が女神ルカの顔を貫いた。



 『な、に__』


 

 「死ね……クソゴミトカゲ野郎が」



 


 その先には先ほど倒されたはずのルコサの姿があった。




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