ルコサ達
《ステージ 血の池地獄》
濡れた岩場に点在する穴からは、真紅の水がグツグツと泡を立て、血のような蒸気を吐き出していた。
漂う鉄臭い匂いと硫黄の熱気が、肌を焼くようにまとわりつく。
「いや〜……この景色にクリスタルの城って、場違いすぎでしょ」
「どう見ても“誘ってます”ってやつじゃねーか、殺すぞ」
「元々、殺さなきゃ出られない……」
赤黒い蒸気の向こうにそびえていたのは、異様に光り輝く クリスタルの城。
「わざわざ招かれて入る必要はねぇだろ」
「同意……」
「じゃあ、満場一致で“入らない”ってことで!」
3人が頷き合った、その時――
「どぅおおおい!? それはないのじゃあああ!!」
突如、城の入り口の影からドタバタと飛び出してきたのは――
背中に「喧嘩上等!」とでかでか書かれた 特攻服姿のルカ。
「あ、出てきた」
「出てきた、じゃないのじゃ!ここまでしておいてそれはないのじゃ!」
「え〜だって、中に入ったら罠とか色々あるんでしょ?」
「うぐ、それはそうなのじゃが……お主ら紛いなりにも冒険者なのじゃ!仲間と協力して苦難を乗り越えてようやく辿り着いたワシと対決するものなのじゃろ?」
「え、それどこの話よ」
「御伽噺とか読みすぎじゃねーの、馬鹿じゃねーの、死ぬか?」
「現実を見ろ……」
「なのじゃ!?」
ルカの必死の問いに冷たく接する3人……ルカは少し涙目になる。
「せっかく頑張って作ったのに……なのじゃ」
「ねぇクロエ、どうする?可哀想だし入ってあげる?」
「のじゃ!?」
「却下」
「即答なのじゃ!?」
「たりめーだろ、それにこんな見え見えのもん作ってたら裏にまわって壁に穴開けて入るとか、この建物ごとぶっ飛ばすかだろ」
「お、お主達は鬼か!女神か!?なのじゃ!」
「テメーが人間の世界でなんの漫画読んだか知らんがそれならそれでもっと中に強制的に入るように誘い込めや」
「そんな殺生なのじゃ……」
「あ〜……ちなみにだけどさ、その語尾って何?キャラ付け?」
「こ、これは勝手に口が動くのじゃ!生き返った時からずっとなのじゃ!」
「へぇ、女神のお遊びかな?」
「まったくなのじゃ……これが普通かと思ったら全然違ったのじゃ……」
「後さ」
「む?」
ルコサがそう告げた瞬間――
バチバチバチッ!
ルカの四方八方に、数え切れぬほどの魔法陣が浮かび上がった。
それは幾何学模様の光輪となって宙に並び、赤・青・紫と不気味な輝きを放ちながら回転する。
さらに――。
「……!」
頭上から、空を埋め尽くすほどの銃火器が次々と召喚される。
ハンドガンからライフル、マシンガンに大砲まで、ありとあらゆる“銃”が形を成し、すべての銃口がルカへと向けられた。
「罠ってのはこうやるんだよ__最後に言い残す事って、何かある?」
ルコサの冷ややかな声。
「……結局、ワシの城は____」
その言葉は最後まで届かなかった。
「はい、さよならー!」
引き金が引かれた瞬間、天地を揺るがす轟音と閃光がルカを飲み込んだ。





