小さな月
太陽が消滅する。
「ーーーーー!?!?!?」
天地を満たしていた光が、一瞬にして奪われた。
不死鳥は戸惑い、荒れ狂う翼を震わせる。
――まるで、大自然の停電。
残された光は、下を流れるマグマと燃えさかる密林、そして己の紅き羽ばたきだけ。
「ーーーー!?!!!」
デスフェニックスは何が起きたかも分からぬまま、周囲へ炎を撒き散らす。
だが――
「なるほど……“太陽が出ていない”それは即ち___」
「夜」
声が空に響く。
見上げれば、虚空に白く輝く小さな月。
そこに立つは、夜を司る神――ツクヨミ。
「夜ならば、僕の出番ということだ」
「ーーーー!!!!」
不死鳥は怒りと恐怖に駆られ、炎を吐きかける。
だが、灼熱の奔流はツクヨミに届くことなく、闇に呑まれ消えていった。
「無駄だ」
冷たき声が告げる。
「成長もせずに四聖獣を名乗る程度が、神に勝てると思うな……【開け、闇の門よ】」
ツクヨミが純白の鎌を落とすと、それは虚空を裂く錨となり、闇の口が開かれ始めた。
「ーーーーーー!!!!」
本能で危険を悟ったデスフェニックスは逃げ出そうとする。
だが――
「……逃さない」
その瞬間、闇の門の内側に巨大な重力の塊が生まれる。
――ヒロユキの魔眼。
「ーーーー!!!!?!?!?!?」
抗う翼は、天命に逆らえない。
不死鳥は引きずられるように、ツクヨミの世界へと呑み込まれ、消え去った。
「……」
「__!? ヒロユキ様!」
ツクヨミが何かに気づき、すぐさまヒロユキの手を取った。
「……どうした?」
「『奴』が来るよ! 急いで!」
有無を言わせず、ツクヨミはヒロユキを自らの世界へと引き込んでいく。
『キャハッ♪ キャハハハハハ★』





