ヒロの想い
「……」
少し遠くで爆発音が響いた。
やはり、あの程度で倒せるはずがない。
不死鳥――デスフェニックス。
クリスタルドラゴンや山亀と並ぶ伝説級の魔物、最初から、これしかないと決めていた。
【武器召喚】
俺の持つ、最大にして最強の魔法。
だがこの魔法には、ひとつ致命的な欠点がある。
――使いたい時に、必ずしも応えてくれるとは限らない。
それでも。
あの魔神は、わざと俺とリュウトの武器を引きずり出させた。
つまり、条件さえ揃えば必ず呼び出せる。
――兄さん。
異世界に来てから、もう何年経っただろう。
寂しいときも、絶望しかけたときも、重大な決断を迫られたときも、ずっと「兄さんなら」と思うことで立ち直れた。
忘れたことなんて一度もない。
……そして、あの時。
アオイが口にした名前。元の世界で、家族しか呼んだことのない名前。
もし俺の予想が正しければ――
「…………兄さん」
今、行く。
「【武器召喚――アンリミテッド】!」
瞬間、黒刀が震え光を帯びて宙へと浮かび上がる。
俺が手を伸ばすと、それは刃を伸ばし、姿を変えていった。
握りしめた時、二メートルもの刀身を持つ日本刀へと姿を定めた。
重々しいはずなのに、不思議と俺の手にはぴたりと馴染み、軽い。
「……行くぞ」
俺は、召喚した長身日本刀を構え__
「【神・斬】」
振り抜かれた一閃は、この世界の“太陽”を消滅させた。





