上へ上へ!
空から落下した巨体は、大地を抉り、土煙と灼熱の火の粉を天へと巻き上げた。
「アニキ!」
「……任せろ」
ヒロユキが魔眼を輝かせると、地面が唸りを上げて動き出す。
大地の隆起が次々と絡みつき、デスフェニックスの巨体を拘束していった。
羽も脚も炎さえも覆い尽くし、やがて――それは巨大な土の卵と化す。
「……」
「や、やったかな……?」
ジュンパクは小声でそう呟きつつも、周囲に魔皮紙を次々とばら撒いていく。
__抜け目のないやつだ。
「……フラグ」
「あ、てへへ……」
そうして待つこと、三十分――。
「……やっぱり、ダメだったね」
卵に亀裂が走る。
次の瞬間、中からドロリとマグマが溢れ出し、大地を真紅の湖と変えていく。
「――――ッ!!!」
業火の咆哮と共に、不死鳥は蘇った。
炎とマグマを纏い、再び空へ羽ばたこうとする。
「今だ!」
その瞬間、ジュンパクの仕込んだ魔皮紙が一斉に反応する。
四方八方から放たれる大砲の弾――。
「望みは薄いけど!」
弾丸は見事に命中。
だが、触れた瞬間に灼熱で溶け落ち、炸裂する火薬もただの爆ぜる火花にしかならない。
「……効いてない……!」
「――――ッ!!!」
デスフェニックスが咆哮し、ジュンパクを視認した。
「フフッ……おいで。今からミーがお前の相手をしてあげる」
挑発するように、ジュンパクの頭にはいつの間にかウサギ耳がぴょこんと生えている。
そして――
「追いかけっこ、しようかッ!」
大地を蹴り飛び、真上へと跳躍した!
あっという間に空高く舞い上がり、下の景色もデスフェニックスの巨体も小さくなっていく。
「――――ッ!!!!!」
だが、赤き翼は煌めきながら大気を切り裂き、巨鳥は猛然と追い上げてきた。
「きたきた! 【空歩】ッ!」
ジュンパクは空中でさらに踏み込み、踏み台を作って加速。
だが高度が増すにつれて装備が凍りつき、息も白く変わっていく。
「うぅ〜……流石にここまで想定してなかったから、寒いよぉ……!」
それでも彼は笑いながら、さらに高みへ。
すでに射程圏外なのか、デスフェニックスは下から追い立てるようにしか追えない。
「早くしてぇ――アニキいいッ!!」
灼熱の巨鳥と跳ねる兎が、空を駆け上がっていく。
そしてその姿を――
燃え盛るマグマを吹き上げるミクラルヴォルケーノの頂上から、ヒロユキが静かに見上げていた。





