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異世界転生したら女になっていました!  作者: しぇいく
第九章

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落ちろ!

 「……」


 最初に仕掛けたのは、ヒロユキだった。


 「――ふん!」


 黒刀がデスフェニックスの巨体――太腿部へ深々と突き刺さる。

 次の瞬間、ジュワァッと水が一気に蒸発するような音が響き、白い蒸気が噴き上がった。


 ヒロユキはそのまま下へ滑るように体を動かし、切り裂いていく。

 だが――


 「……っ」


 途中で違和感を覚え、すぐさま刀を抜いた。


 「……なるほど」


 黒々としていた刀身は、熱を吸い込んだかのようにオレンジ色へと輝きを変えていた。

 ――デスフェニックスの体内は、常識を超える灼熱。


 「……ジュンパク、気をつけろ」


 「はーい!」


 背後からジュンパクが鎖鎌を投げ込む。切れ目へ吸い込まれるように刃が突き刺さり――


 {あつ!あつあつあつあつ! あっつい! 嫌ァァァア!!}


 頭に直接響くツクヨミの悲鳴がジュンパクに伝わってきたが無視!


 「せーのっ!」


 ジュンパクは鎖へ魔力を流し込み、稲妻を奔らせる!

 だが――


 「……やっぱりダメか」

 {思ってるならするな!}


 電撃は虚しく炎に飲まれ、傷口にすら届かない。

 ジュンパクは顔をしかめつつ、鎌を回収した。


 さらに――


 「……再生能力」


 「流石、不死鳥って呼ばれるだけあるね、早い」


 ヒロユキたちが斬り刻んだ傷は、もう塞がっていた。

 肉が盛り上がり、赤熱した羽毛が再び生えそろっていく。その異様な光景に、背筋が粟立つ。


 「――――ッ!!!」


 「奴さん、気付いたみたいだよ!」


 「……あぁ、そうみたいだな」


 デスフェニックスはついにヒロユキとジュンパクを視界に捉えた。


 「――――――――!!!!」


 咆哮と共に灼熱の翼を広げ、攻撃に移る。



 「……来るぞ、ジュンパク」


 「うん!」


 二人は後方へ身を翻し、一気に飛翔。

 背後から迫る巨大な翼の羽ばたきと轟音が、距離を埋めようとしてくる。


 スピードは互角――。


 「うーん……やっぱりデカすぎるね」


 「……」


 「でも――勝機はあるかも」


 「……試してみよう」


 「うん!」


 互いに短く頷き合い、二人は進路を大きく変える。

 炎に焼かれていない密林の奥へと飛び込み、その影に紛れていった。


 「ーーーー!!!」


 見失ったデスフェニックスは、怒り狂ったように口から高熱の火を吐き出した。

 轟炎が密林を呑み込み、あたり一面を焼け野原へと変えていく。


 「……」


 その業火の中から――ヒロユキの影が現れた。


 「――――ッ!」


 デスフェニックスは咆哮と共に火炎を浴びせかける。

 だが、手応えはない。


 「―――?」


 次の瞬間、別の場所から再びヒロユキの影が姿を現す。

 さらに、さらに――密林のあちこちから次々とヒロユキが飛び出してきた!


 「……これがユキナなら効かなかっただろう」


 ヒロユキは魔眼を限界まで酷使し、土人形に幻影を重ねて自分の姿を映し出していたのだ。


 「――――ッ!!!」


 予想通り、デスフェニックスは幻影に向かって猛攻を仕掛ける。


 「……ジュンパク」


 「はいよッ!」


 その声と同時に、ジュンパクが密林の影から飛び出した。

 真下から一直線に舞い上がり、巨大な足へ鎖を巻き付けていく。


 「――とりあえず、堕ちろッ!!」


 地面へ着地すると同時に、ジュンパクは鎖を一気に回収した!


 「――――ッ!?!?」


 クリスタルドラゴンに匹敵する巨体が、信じられぬほどの勢いで地面へと引き寄せられる。

 大気を切り裂く羽ばたきも、鎖の力に抗うことはできない。


 「――――ッ!!!!」


 不死鳥デスフェニックスは、怒りの咆哮をあげながら――

 ついに大地へと叩き落とされた!



 

 


 

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