いざ、洞窟内へ
「アアアアオオオオイイイイイ!!!」
「____ッッ!!??」
突如、雲を割って舞い降りた黒き巨影
「イイイイイイイイ!!」
ブルゼの巨躯は信じられない速度で山亀の周囲を旋回する。
「オオオオオオオオ!!」
ブルゼの異形の口からストローのような器官が伸び――
緑色の巨大な液体を吐き飛ばしてきた。
「グオオオオオオッ!!」
得体の知れぬ攻撃に危険を察した山亀は、甲羅の隙間から無数のレーザーを放ち、液体に集中砲火を浴びせる。
――次の瞬間。
ボゴォォォォォンッ!!
液体が炸裂し、無数の飛沫が降り注ぐ。
海に落ちたそれはシュウウウッと白煙を上げ、やがて海そのものを毒々しい緑色へと侵食していく。
「____!!!」
怒号とともに山亀の巨体が揺れる。だがその一瞬の隙を逃すブルゼではない。
「アアアアアアアア!!!」
黒い弾丸のように突進し、次の瞬間――山亀の顔面に取り付いた!
硬質の表皮に、鋭い虫の爪が突き刺さる。
「____!!!」
山亀は海を割る勢いで頭を振り回し、必死に振り落とそうとする。
だが、ブルゼは食らいついたまま咆哮を上げ、顔面に張り付き続ける――。
巨獣同士の激突で、海も空も揺れる。だが、その隙――山亀の周りへの攻撃が止んだ。
「ほんと、こういうの……私の専門じゃないんだから!」
金色のブルゼの背に掴まったアンナが甲羅の上に着地する。
「山亀を引きつけてくれたおかげで助かったわ……気づかれる前に探し出す!」
「アアアア?」
黄金のブルゼがわずかに首を傾げる。
「いいから、少し静かにしてて!」
「イ……」
アンナは目を閉じ、深く息を吸い込む。
「すぅ……《マジックシーリング》!」
次の瞬間、彼女の視界は闇と線で構築された異界の光景に切り替わる。
空間を走る魔力の流れが血管のように浮かび上がり、二つの巨大な塊がぶつかり合っていた。
「……うわ、予想してたけど……二人とも魔力量デカすぎ!」
ぶつかり合う二つの魔力の奔流。その一つは明らかに山亀のものだった。
アンナはその奥へ奥へと意識を潜らせていく。
「甲羅の隅々にまで魔力が循環してる……これ、どう考えても常識外れの量よ……」
「オ?」
「黙っててってば!」
「ア……」
緊張で汗が頬を伝う。だが――彼女はついに、その中心を視た。
「……見つけた!核!」
目を見開き、アンナは叫ぶ。
「行くわよ!!」
「イイイイ!」
黄金のブルゼに掴まり、彼女は甲羅に空いた洞窟の入口へと飛び込む。
「……甲羅に洞窟ってどういう構造なのよ……。でも、ここから行くのが一番早い!」
「アアアア!」
こうして、アンナとブルゼは轟音の戦場を背に、山亀の体内へと潜入していった――。





