化物大戦争開始!
「【眷属召喚】?」
「そう。私の能力のひとつで――こうして眷属を呼び出せる」
ルダが展開した魔法陣から、成人男性ほどの大きさのブルゼが姿を現す。
「っ……!」
アンナの脳裏に、あの時の恐怖がよぎる。
「あの……モンスター……」
「安心するさね。私が命じない限り襲ったりはしない」
「……」
顔を真っ青にしながらも、アンナはぐっと堪えた。
「ごほん……それで、こいつは何匹出せるの?」
問いかけに、ルダはドヤ顔で胸を張る。
「ざっと……小さいのも含めれば、十一億体ってとこさね!」
「じゅ、十一億!?!?!?」
「アンナ、人間の精子が一日にいくつ生産されるか、知ってるか?」
「は? な、なんで今そんな話に……」
「答えるさね」
「し、知らないわよ! 考えたこともない!」
「ざっと五千万から一億。――そのすべてが“人間という種の核”。私はそれを変換し、眷属として召喚できるのさね」
「……そ、そういう理屈なら……まあ納得はするけど」
「どうやって採取したか、聞いてみるさね?」
「予想はつくから遠慮しとくわ」
「カッカッカッ! 若いってのはいいさね!」
「分かった、分かったから……。それでさっき“追ってきてない”って言い切ったのね?」
アンナが“眷属”という言葉から導き出した予想を口にすると、ルダはニヤリと笑う。
「そうさね。――だからこそ、今から急いで眷属たちを召喚する」
ユキナが大要塞を築いていることを伝え、そして――現在。
「……これはまた、随分と大規模な戦争になりそうね」
アンナは各方面に配置されたブルゼたちの視界を通して映像を見つめていた。
そこには一つの巨大な森の要塞。花々や蕾は一斉にこちらへ向き、射程に入れば撃ち落とさんと構えている。
「よく見れば……見たこともない新種も混ざってるさね」
さらに、木の根で作られた陸地には花や果実の頭を持つ植物兵士がぎっしりと待ち構えていた。
「……考えることが増えたわ。面倒くさい」
「…………その言葉」
「?」
「いや、何……。私がこの姿になってから、好きになった人の口癖さね」
「そう。じゃあ生きて帰ったら、その人に言ってあげなさい」
「ククッ」
「何がおかしいのよ?」
「いや……敬語じゃなくなって、すっかり板についてきたなと思ってさね」
「言ったのはアナタでしょ」
「よろしい。……でも、生きて帰っても言わないさね」
「どうして?」
「恥ずかしいからさね」
「フフッ」
「ククッ」
――短い笑いのやりとりを交わした後。
「じゃあ、行くわよ。――進軍!」
その号令と共に、ブルゼの軍勢が轟音を立て、大要塞へと進軍を開始した!





