絶対に確かめたい事
「ここまで来れば、一先ずは安心さね」
「…………」
「それにしても……どこまで行っても海ばかり。この世界は不思議さね」
「……」
「で、何か分かったか?」
ルダが問いかけると、アンナは顎に指を当てたまま黙り込んでいた。
やがて――
「あの種……“何もない場所”から出てきたのよ。魔法陣で転移させたんじゃない。まるで――最初からそこに存在していたみたいに」
「ふむ……」
「まだ仮説だけど、もう一つ……これを確かめないと」
アンナはルダを真っ直ぐに見据える。
「――あなたは誰?」
「誰とは……? 私は最初に言ったはずさね」
「神の使徒。それは分かってる。……でも、それだけじゃない」
「……」
「私の記憶……思い出せないのよ。いや、正確には――思い出そうとすると、別の記憶に塗り替えられる感覚がある。その中心にいるのは、アンタ」
「ククッ……流石さね」
「そういう誤魔化しはいらない。すぐに言いなさい。……でないと――」
アンナは魔法陣を展開し、ルダに向けて構えた。
「……何の真似だ?」
「助けてくれたことには感謝してる。でも、力の差があるのは分かってる。それでも今ここで戦力を削がれるのは――アンタにとっても痛手でしょ? 話す気がないなら……力ずくで吐かせてもらう」
「ふむ……お前は確か、記憶を取り戻すためにリュウトたちと行動していると聞いたが」
「ええ。思い出したわ――アオイが、あの怪物を生み出したことを」
ルダの目がわずかに細められる。
「だが、それだけではないのだろう?」
「……っ!」
アンナの身体が震え、何もされていないのに冷や汗が滴り落ちる。
「わ、私の記憶は……そこだけじゃ、ない!!」
【呪い】――無意識を操るその力は、アンナの記憶を覆い隠していた。
「なるほど……神も、ずいぶん粋な真似をするさね」
「何を言ってるの!」
「お前は今、“無意識に考えない”よう仕組まれていた記憶を……無理やり掘り起こそうとしている。呪いに……自分で抗っているんだ」
ルダは静かにアンナの手を下ろさせ、その指先を自分の額へと導く。
「……っ」
「思い出すといい――あの時のこと。そして……私のことを」





