アンナ ルダvs
《ステージ 海地獄》
「え!? え、えええええええっ!?」
アンナはステージに転送された瞬間、まるでスカイダイビングのように空を落ちていた。
眼下には――どこまでも続く、コバルトブルーの海。
「な、なによこれええええっ!!」
緊急事態。ポケットを探るが、焦りすぎて手が滑る。
「あっ……! いやぁぁぁあ!! 死ぬ死ぬ死ぬ!!」
あれでもない、これでもないと必死に探すうち、水面はどんどん迫ってきて――
「も、もうダメえええっ!」
――その瞬間。アンナの身体は、ぴたりと宙に止まった。
「ひっ……はぁ……はぁ……」
心臓が破裂しそうな息を吐きながら、ゆっくりと海面へ降ろされる。
「まったく。アンタはそんなにギャーギャー騒ぐタイプじゃないのに……人間、変わるものさね」
フワリと海の上に着地し、アンナはくしゃくしゃの髪を直しながら、その声の主を見上げた。
「アナタは……誰?」
そこに立っていたのは――長い黒髪に黒のセーラー服を纏った女。
その名は、ルダ。
「そういえば……アンタの担当は、ほとんどクロエだったさね」
「クロエさん? まさか、その言い方……」
「ここまで言えば分かるだろう? ――私は【神の使徒】、ルダさね」
「……はぁ」
「何さね、その反応は」
「クロエさんやルコサたちの実力や分析力は認めてるわ。でも――神なんてものは信じてないのよね」
「ほう?」
「だって、パッとしないじゃない? アナタには悪いけど、能力や魔力が人間離れしてるだけで……“それが神か?”って言われたら、ただの力の強い存在にしか見えないわ」
「ふむ……確かに一理あるさね」
「まあ、そんな私に“神とは何か”って聞かれても答えようがないんだけど」
「やれやれ……相変わらずださね」
「……さっきから“分かってる”みたいな口ぶりね? それに、その喋り方――」
――ドンッ!
上空から落ちてきた何かが水面に激突し、巨大な水飛沫を上げた。
「……」
「……」
「あ、あの……これ、もしかして仲間だった?」
「ど、どうだろうさね? 喋ってて気づかなかったさね……」
「……」
「……」
2人は顔を青ざめさせ、見つめ合う。
だが、その心配は杞憂に終わった。
「私、相手」
「アンタは……!」
「ほう、これはまた……かなり不利な状況さね」
海からゆっくりと姿を現したのは――ユキナだった。





