【過去】
《洞窟》
「ただいまですぞ! 蜘蛛蛇!」
「フシュルルル」
洞窟に戻ると、お留守番をしていた蜘蛛蛇がすぐに姿を現し、親子を出迎えた。
本来なら洞窟に巣を張って獲物を待ち伏せする魔物――。だが、この親子とはもう長い付き合いで、まるで家族のように共に暮らしている。
「フシュルルル」
「ん? 何かいいことがあったのかって? えへへ、実はですぞ……!」
ムラサメは袋から、さっき買ってきた肉を見せる。
「フシュルルル」
「だーめですぞ! これは料理してから、3人で食べるですぞ!」
「フシュルルル」
蜘蛛蛇の声は不思議と通じる。
だからこそ――彼らは共に生きていけるのだろう。
「フフッ、2人ともお母さんは料理の準備をするから山から湧き水を取ってきて?」
「はいですぞ!行きますぞー!」
「フシュルルル」
2人は洞窟を元気よく出ていった。
「……さて、と」
母親は手作りの竈門で料理をしようとボロボロの魔皮紙に魔力を流すが……
「あれ?つかないわね」
何度も何度も魔力を通すがつかない。
【火を付けるのをお困りで?】
「!?」
後ろから聞こえる“綺麗な女性の声”に振り返ると
【ずっとスタンバイしてました、どうも】
そこには声と引けを取らない程美しく、可愛く、綺麗な女性がいた。
彼女は涙を枯らした充血した目で1つの質問をした。
【自分の子供は好きですか?】